
外国人整備士の受け入れを検討する際、まず考えたいのが「技能実習」と「特定技能」、どちらの制度を使えばいいのか?ということです。
それぞれ制度の目的や期間、在留資格の違いがあり、自社の状況によって最適な制度は異なります。
この記事では、自動車整備工場の経営者様向けに、技能実習と特定技能の違いを制度の背景から分かりやすく解説します。
制度の選び方に迷っている方は、ぜひ最後までお読みください。
この記事で分かること
- 技能実習と特定技能の制度的な違い(目的・期間・在留資格)
- 整備業における制度ごとの活用パターン
- 自社に合った制度を選ぶための判断基準
制度の目的・位置付けの違い
まず注目すべきは、それぞれの制度が設計された「目的」です。
制度の根本的な趣旨が異なるため、導入後の人材活用のあり方にも大きな影響を与えます。
技能実習制度は、主に開発途上国への技術移転を通じた国際貢献を目的として設けられた制度です。
「実習」という名のとおり、教育や訓練の色が濃く、就労を目的とした制度ではありません。
一方で特定技能制度は、日本国内の深刻な人手不足に対応するため、即戦力の外国人材を雇用できるよう設計された制度であり、制度設計の段階から「労働力の確保」が明確な目的となっています。
| 比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
| 制度の目的 | 国際貢献(途上国への技術移転) | 労働力不足の補填 |
| 位置付け | 教育・訓練制度(就労ではない) | 就労を前提とした労働制度 |
| 対象国 | 二国間協定のある国 | 世界中(条件あり) |
技能実習制度においては、外国人は「実習生」であり、「労働者」ではありません。実際には労働に従事している場面も多く見られますが、制度的な立場は教育・訓練を受ける立場である点が重要です。
一方、特定技能制度は、慢性的な人手不足に悩む業界に対して、即戦力となる外国人材を受け入れるために2019年に新設された比較的新しい制度です。
こちらは制度上も「労働者」として明確に位置付けられており、受け入れ企業にも労働者保護や支援体制の整備が厳しく求められます。
特定技能では、企業側に外国人材への支援義務(日本語学習の機会提供、生活支援、相談窓口の設置など)が課されており、制度導入時の準備と体制構築が非常に重要です。
定着率の向上や早期離職の防止にもつながりやすいため、長期雇用を視野に入れる企業にはメリットが大きい制度です。
労働内容・期間・在留資格の違い
次に、実際に外国人が働ける内容や期間、在留資格としての扱いにも大きな違いがあります。
在留期間と就労制限
| 比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
| 在留期間 | 最大5年(1年+2年+2年) | 1号:最大5年2号:無期限(条件あり) |
| 就労可能業務 | 実習計画に基づく限定業務 | 所定の12分野におけるフルタイム労働 |
| 在留資格 | 技能実習1号〜3号 | 特定技能1号・2号 |
技能実習制度では、所定の期間内に試験に合格すれば、在留期間を更新でき、最大5年間まで延長することが可能です。
しかし、この制度では5年経過後には更新することができないため、それ以上期間を伸ばして雇用したい場合は、特定技能など、他の制度に移行する必要があります。
また、外国人が行う業務は、企業側が作成した「実習計画」に基づき、限られた業務のみに従事します。
本人が希望しても業務内容を変更することは困難であり、あらかじめ定めた実習内容に沿って勤務しなければなりません。
これに対し、特定技能制度では、比較的柔軟に仕事内容を決めることができます。
また、所定分野の業務にフルタイムで従事することが可能であり、日本人労働者とほぼ同様の職務内容を担います。
そして、特定技能2号の資格を取得すれば、在留期限の撤廃や家族帯同の可能性も広がり、より長期的な雇用に対応できます。
整備業における活用場面の違い

自動車整備分野における両制度の使い分けについても、ポイントを整理しておきましょう。
技能実習制度は、特定の整備工程に時間をかけて技術を教えることに向いており、教育的な側面が強い制度です。
特定技能制度は、ある程度の技術を持った即戦力人材を確保したい場合に適しています。業務内容や配置転換にも柔軟に対応できるため、現場の状況に応じた運用が可能です。
実務での違い
| 比較項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 |
| 目的 | 技能習得を支援する | 即戦力として雇用する |
| 対象業務 | 限定された実習工程のみ | 整備士業務全般(エンジン、シャシ、電装) |
| 業務柔軟性 | 実習計画外は不可 | 配置転換・業務変更も可 |
例えば、「エンジン整備の工程だけを3年かけて教えたい」という場合は技能実習制度が適しているかもしれません。
一方、「車検整備や点検業務まで幅広く任せたい」「即戦力として整備ラインに立ってほしい」という場合は、特定技能制度の方が適しています。
どちらの制度でも、洗車や雑務だけの単純作業などを行わせると制度違反になりますので、技術業務に従事させる必要があります。
どちらが自社に向いているのか?判断基準
ここまで見てきたように、技能実習と特定技能は制度の根本から異なるため、導入の目的や自社の体制によって向き不向きが明確に分かれます。
以下の表で判断基準を整理してみましょう。
| チェック項目 | 技能実習が向いている場合 | 特定技能が向いている場合 |
| 雇用の目的 | 育成を通じて企業の組織力・技術力を 向上させる | 現場で即戦力として長く働いてもらう |
| 業務内容 | 限定的でもでもよい | 幅広い業務に対応してもらいたい |
| 雇用期間 | 最長5年で十分 | 5年以上長期的に戦力化したい |
最も重要な点は、「長期的な労働力を確保したいかどうか」です。長期的な労働力を視野に入れると、特定技能制度を選ぶことが有利です。
また、近年では、制度間の移行も注目されています。例えば、技能実習から特定技能への移行が認められており、一定の条件を満たせば実習修了者が引き続き同じ企業で特定技能として働ける可能性があります。
最初は技能実習制度を選び、制度の枠を越えて段階的に活用する戦略も有効です。
まとめ:制度の違いを正しく理解して最適な選択を
技能実習制度と特定技能制度は目的や運用方法が大きく異なります。
技能実習制度は開発途上国への技術移転など国際貢献を目的とし、教育や訓練が中心で最長5年の在留が可能ですが、業務内容が限定されています。一方、特定技能制度は日本の人手不足解消を目的とした即戦力人材の雇用を想定しており、より幅広い業務にフルタイムで従事でき、特定技能2号では長期雇用や家族帯同も可能です。
選定の際は、雇用期間や業務の柔軟性、管理体制などを明確にし、最新情報を取得しながら制度を選びましょう。
適切な制度選定が現場の安定につながります。選定を誤ると、現場の混乱やトラブルの原因にもなりかねません。
導入にあたっては、以下の3つのステップで検討しましょう。
- 自社の目的を明確にする(長期的な労働力が欲しいかどうか)
- 制度の要件や運用負担を確認する(支援体制・専門家のサポート)
- 採用計画に応じて、制度を使い分ける
また、各制度の法令改正や運用変更も頻繁に行われています。そのため、常に最新情報を収集することや、行政書士や専門機関への相談も制度運用の成功には欠かせません。
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