この記事ではインボイス制度の概要や事前準備、自動車整備事業者への影響について詳しく解説していきます。インボイス制度について知りたい自動車整備事業者の皆さまは、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
【目次】
1 インボイス制度とは?
1-1インボイスと区分記載請求書の違い
1-2 経過措置
2 インボイス制度導入の背景
3 インボイス制度が自動車整備事業者に与える影響
3-1 自動車整備事業者が免税事業者の場合
3-2 自動車整備事業者が課税事業者の場合
4 売上1,000万円以下の事業者が適格請求書発行事業者の登録をしなくてもデメリットがない3つのケース
4-1BtoCビジネスのケース
4-2顧客が簡易課税事業者のみのケース
4-3消費税を請求しないケース
5 自動車整備事業者が行うべきインボイス制度の事前準備
5-1自動車整備事業者が免税事業者の場合の準備
5-2自動車整備事業者が課税事業者の場合の準備
6 まとめ
インボイス制度とは?
インボイス制度は正式には「適格請求書等保存方式」といい、2023年10月1日から導入される、請求書の発行や保存にかかわる新制度です。請求書の作成方法や仕入額控除の要件が変更されるため、すべての事業者に影響があります。
当然、自動車整備業者の方にも影響があるため、制度の内容や現行制度との変更点などを把握して事前準備を行わなくてはいけません。
インボイスと区分記載請求書の違い
現行の請求書方式である「区分記載請求書」には、以下の事項が記載されています(※1)。・事業者の氏名または名称
・取引年月日
・取引内容
・税率ごとに区分して合計した対価の額
・軽減税率の対象品目である旨
・書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
一方で、インボイス(適格請求書)には、上記にくわえて下記の事項が追加されています(※1)。
・登録番号(課税事業者のみ登録可)
・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
なお、不特定多数を相手に事業を行なっている「小売業・飲食業」などの特定の業種は、適格簡易請求書で代用することが可能です。
経過措置
インボイス制度が開始されると、適格請求書発行事業者以外からの仕入れでは、消費税の控除が受けられません。しかし、多くの事業者に影響がある制度で経過措置がなければ混乱を招くため、適格請求書発行事業者以外からの課税仕入について、インボイス制度実施後も6年間の経過措置が設けられています。その内容は下記のとおりです(※1)。
・2023年10月1日〜2026年9月30日まで仕入税額相当額の80%
・2026年10月1日〜2029年9月30日まで仕入税額相当額の50%
インボイス制度導入の背景
インボイス制度が導入されている背景には、軽減税率の導入があります。2つの税率を並行して運用していることにより、税率ごとに分けて計算する必要があり、消費税額の把握が難しくなってしまったためです。インボイス制度は軽減税率により把握が難しくなった消費税額を、正確に把握することを目的としています。
また、納税の免除や軽減により合法的に納税されず手元に残った消費税である「益税」の問題を解消することも、目的の一つであると言われています。
インボイス制度が自動車整備事業者に与える影響
インボイス制度がスタートすると、自動車整備事業者にさまざまな影響を与えます。
ここでは、自動車整備事業者がどのような影響を受ける可能性があるのかについて解説していきます。自動車整備事業者の方は、内容を確認していきましょう。
自動車整備事業者が免税事業者の場合
インボイス制度がスタートすると、年間の課税売上高が「1,000万円以下」の免税事業者は、課税事業者へ転向するかどうかを決断する必要があります。免税事業者のままでいるとインボイスを発行できないため、取引先が課税事業者の場合、仕入税額控除を適用できません。取引先がそれを懸念して、インボイスを発行できる他の事業者に切り替えられてしまうリスクがあります。仮に継続して取引ができても、取引条件の変更を求められる可能性も捨てきれません。このように、自動車整備事業者が免税事業者の場合、大きな影響を受ける覚悟が必要です。
なお、出張整備士や整備工場で業務受託している個人事業主の整備士も、免税事業者に該当する可能性が高いため、インボイス制度の内容をよく理解しておくようにしましょう。
自動車整備事業者が課税事業者の場合
自動車整備事業者が課税事業者の場合は、インボイス制度により以下の影響を受けます。・インボイスの発行を要求されたら発行しなければならない
・あらかじめインボイス事業者になるための申請をして、適格請求書発行事業者になる必要がある
・インボイスを発行するためのシステムを用意しておく必要がある
・免税事業者との取引を見直す必要がある
制度に対応できるように、上記の影響を理解したうえで、事前に必要な準備をしておくようにしましょう。
売上1,000万円以下の事業者が適格請求書発行事業者の登録をしなくてもデメリットがない3つのケース
免税事業者が適格請求書発行事業者として登録するかどうかは任意ですが、取引先から登録を求められることが増えてくると考えられます。しかし、登録しなくても、免税事業者にとってデメリットがない場合もあります。
ここでは、適格請求書発行事業者の登録をしなくてもデメリットがない3つのケースについて解説します。課税売上が1,000万円以下の自動車整備事業者の方は、ご自身のビジネスが次のケースに当てはまるかどうか確認してみてください。
BtoCビジネスのケース
顧客が消費税申告を行わない一般消費者しかいない場合、「消費税控除が適用できない」というデメリットが生じません。したがって、顧客が一般消費者のみである事業を行っている場合は、登録を行わないという選択肢も考えられます。
顧客が簡易課税事業者のみのケース
簡易課税とは簡易的に消費税額を算出して納税できる制度のことで、インボイス制度が始まった後も利用できます。したがって、取引先が簡易課税事業者のみであれば、適格請求書発行事業者として登録していなくても、消費税控除ができないというデメリットが生じません。
ただし、取引先が簡易課税事業者かどうかを判断するためには、取引先へ直接確認する必要があります。
消費税を請求しないケース
取引先に消費税を請求しないのであれば、登録する必要がありません。ただし、消費税を請求しないぶん、今まで受け取っていた消費税分の収入が減ってしまうというデメリットがあります。取引先と交渉して値上げできれば収入が変わらない可能性もありますが、値上げに同意してもらえないケースも少なくないでしょう。
登録をせず消費税の請求もしない場合は、収入が少なくなる可能性があることを理解しておきましょう。
自動車整備事業者が行うべきインボイス制度の事前準備
自動車整備事業者の皆さんが、インボイス制度の開始までに行うべき事前準備を紹介します。理解しておかないと制度開始後の取引に影響が出る可能性がありますので、しっかりと確認しておきましょう。
自動車整備事業者が免税事業者の場合の準備
免税事業者は、インボイス制度がスタートするまでに以下のような準備をしておく必要があります。・取引先とインボイス制度導入後の対応について話し合い、適格請求書発行事業者として登録するかを検討する
・課税事業者に変更する場合は、事前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する
・適格請求書発行事業者になるための登録申請を行い、登録番号の通知を受ける
・インボイスを発行できるようにシステムや請求書を変更する
ただし、上に挙げたケースのように、インボイス制度導入後も免税事業者のままでも問題ないこともあります。その場合は、特に対応する必要はありません。取引先によって対応が変わってきますので、経過措置の利用や消費税を請求しないなどの対応を含めて、取引先への提案や交渉をするようにしましょう。
自動車整備事業者が課税事業者の場合の準備
課税事業者は、インボイス制度の開始までに以下の事前準備が必要になります。・適格請求書発行事業者になるための登録申請を行い、登録番号の通知を受ける
・インボイスに対応した受発注システムや経理システムを導入する
・取引先に免税事業者がいるかを確認し、免税事業者への対応を決める
・必要であれば免税事業者と話し合いを行う
上記のような対応が必要になりますので、インボイス制度が始まる前に余裕を持って準備しておきましょう。
まとめ
自動車整備事業者の方もインボイス制度がスタートするとさまざまな影響を受けるため、会社の状況に合わせた準備が必要になります。必要な準備は以下のとおりです。
・課税事業者は適格請求書発行事業者になるための登録をする必要がある
・取引先と、インボイス制度が始まった後の対応を話し合う必要がある
・免税事業者は、課税事業者に変更するかよく検討する必要がある
・免税事業者でも取引先が簡易事業者の場合や消費税を請求しない場合は、適格請求書発行事業者の登録をしないという選択肢もある
上記のような、必要な準備と制度を理解して、適切な対応ができるようにしましょう。
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【引用】
※1
・国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf