自動車整備事業の売上改善に繋がる商圏分析の方法

商圏分析とは、国勢調査データなどの統計情報や自社で収集した顧客データを活用して「自社店舗周辺の市場の大きさ」「地域特性」などを把握し、潜在売上規模を把握する取り組みです。

本稿では、自動車整備事業者にとって重要な商圏分析の方法や、データ分析後に必要な施策について解説します。


【目次】
1 なぜ商圏分析が自動車整備事業者にとって重要なのか? 
2 商圏分析の方法
 2-1 ①:自社データのマッピング
 2-2 ②:商圏範囲の把握
 2-3 ③:商圏に関する情報の集計
 2-4 ④:レポートの作成
3 商圏分析で活用できる公的なデータ
 3-1 国勢調査
 3-2 住民基本台帳
 3-3 推計年収別世帯数データ
4 商圏分析のデータを活用したエリアマーケティング
 4-1 売上と需要の予測
 4-2 優良顧客への販促活動
5 まとめ

なぜ商圏分析が自動車整備事業者にとって重要なのか?

商圏分析は、自店舗周辺の市場規模や地域特性などを把握するための取り組みです。自動車整備事業は地域密着型のビジネスですので、自社の事業をさらに拡大させる上で自店舗周辺の商圏分析は有効な手段となります。

自店舗から「①自社や競合他社を地図上にマッピングする→②車で最大数十分で移動できる距離を商圏と設定する→③公的なデータなどを使って商圏内の特徴を調査する→④集計した商圏に関する情報のGoogleマップへの反映やレポート作成をする」といった手順で、商圏内の潜在顧客の特徴に合致した施策を講じれば、売上アップに繋がるでしょう。

商圏分析で得られる情報は、ターゲットエリアに住んでいる潜在顧客の特性や将来性、競合他社の状況といった多角的な情報ですので、経営を続けていく上ではさまざまな局面で役に立ちます。例えば、中長期での新規事業の検討や、潜在顧客への効果的なプロモーション施策の策定などです。

商圏分析の方法

商圏分析も、Googleスプレッドシートがあれば行うことができます。より詳細なデータ分析をしたい場合は、地図上のデータを表示・分析するGISツールやソフトなども活用しましょう(図1)。

図1.商圏分析の実施手順
商圏分析の手順

以下より、商圏分析の具体的な手順を解説します。

①:自社データのマッピング


まずは、自社や競合他社の住所情報を使って地図上にマッピングし、エリア情報を俯瞰で確認します。その際、顧客の住所情報などが分かっていれば、それらもマッピングしましょう。

マッピングの手順は、以下の通りです。
 
商圏分析1

まずは、Googleマップにアクセスし、左上の【 ≡ 】を選択します。

商圏分析2

表示されたメニューの中に【マイプレイス】の項目がありますので、そこをクリックしましょう。

商圏分析3

次に、【マイマップ】を選択し、メニュー下にある【地図の作成】を実行します。

商圏分析4

商圏分析5

【インポート】を選択し、顧客リストが格納されたファイルをアップロードした後、マップ上に顧客情報がマーキングされれば完了です。アップロードするファイルはGoogleスプレッドシート以外にも、Excelなどに対応しています。

②:商圏範囲の把握

マッピングが完了した後は、デジタル化された自社の顧客情報をカウントし、仮の商圏を想定する必要があります。前述のような「車で移動できる半径5km圏内」など、自動車整備事業者であれば基本的に車で移動することを前提にして、自動車整備店の立地なども鑑みながら商圏範囲を設定しましょう。

仮に、「ビズピット株式会社(所在地:大阪府大阪市淀川区西中島6丁目3−24)」の車で半径15分(5km)圏内にある自動車整備事業者をマッピングした場合、実際の地図は以下のようなイメージになり、優先的にアプローチするべき顧客を絞り込めます。

ビズピット商圏

※顧客管理・顧客情報の分析による優良顧客の見つけ方を解説

③:商圏に関する情報の集計

商圏範囲の設定が終わったら、次は官公庁が公開している公的なデータを使って商圏情報の収集を行います。例えば、国勢調査データを使えば、商圏内の人口・世帯およびそれらの属性を参照できます。

官公庁や大手シンクタンクなどが公表している公的データを収集し、商圏内のエリア特性や所得レベルを把握することで、自社のサービス内容や価格設定に反映可能です。

例えば、前述したビズピットの仮商圏に関するデータを収集する場合、大阪府淀川区の世帯年収について調べると平均438万円であり、「その他諸雑費」への年間支出は「単身世帯が28万円」「2人以上の世帯が52万円」とわかります。

世帯収入
(出典:住まいインデックス)

上記データの場合、自社で新規サービスを展開するケースにおいて「価格設定はいくらにすればいいのか」「需要はどの程度あるのか」などの判断材料にできます。

④:レポートの作成

集計した商圏に関する情報を活用すれば、無料でGoogleマップへの反映やレポートの作成ができ、商圏特性をより正確に把握できます。なるべく正確なレポートを作るためには、普段から顧客情報の電子化を行い、ツールで管理しておきましょう。

自動車整備事業者がアナログ情報をデジタルに置き換えるメリットについては、下記の記事でより詳しく解説しています。

自動車整備事業者が情報の電子化を実施するメリットとは?

商圏分析で活用できる公的なデータ

商圏分析で役立つ代表的なデータとして、「国勢調査」「住民基本台帳」「推計年収別世帯数データ」などがあります。この他にも、多様なデータがさまざまな機関から無料で公開されていますので、より詳細な分析をしたい場合は積極的に活用すると効果的です。

国勢調査

国勢調査は総務省統計局によって公開されている公的データで、日本国内における人口や世帯、産業などに関して行われた調査内容をまとめたものです(※1)。国勢調査データは5年ごとに実施され、商圏内の人口や世帯数など、商圏分析で必要となる基本的なデータを取得できます。

住民基本台帳

国勢調査データと同じく、総務省統計局によって公開されているデータが住民基本台帳です(※2)。調査は毎年行われるため、商圏内の人口動態および世帯数のポイントといった情報に関する最新データを確認できます。

推計年収別世帯数データ

推計年収別世帯数データは、国勢調査や住宅・土地統計調査などを基に作成された、年収6階級別の世帯数推計データです(※3)。商圏内の富裕度や世帯年収の傾向がわかりますので、自社サービスの価格設定などに活かせます。

商圏分析のデータを活用したエリアマーケティング

売上と需要の予測

前述の通り、潜在顧客や競合他社の状況などのエリア特性を活用することで、自社の売上や需要予測が可能です。

売上予測や需要予測をするためには、データの収集に加え「ハフモデル分析」をすると、より詳細な分析ができます。ハフモデル分析とは「顧客からより近くにあり、魅力度の高い店舗ほど多くの集客ができる」という仮説のもと、潜在顧客が住んでいるエリアや競合店舗との位置関係などに鑑み、自店舗の需要予測をする分析方法です。

データ分析を行い、売上や需要に関する予測ができたら、そのデータを基にして自社のサービス改善に繋げましょう。例えば、「商圏内に存在する競合他社に比べ自社の価格は割高なので別の付加価値をつける、もしくは値段を改定する」など、具体的な施策が検討できます。

優良顧客への販促活動

商圏分析で得られたエリアごとの人口密集度や所得データなどから、チラシやDMなどの販売促進行動を積極的に行うべき地域の優先順位をつけられます。既存顧客だけでなく、優良顧客属性を持った新規見込み顧客にターゲットを絞ることで、集客活動の費用対効果の改善に繋げられます

販促活動の方法としては、チラシ配布やDMなどです。さらに、見込み顧客ごとの行動分析データも活用すれば、適切なタイミングでお役立ち情報などをメールで配信することもできます。

まとめ

実店舗を構える形のローカルビジネスである自動車整備事業では、商圏分析を行い、自社がビジネスを行うエリアについて把握しておくことは必要不可欠です。商圏分析を行えば、自社の商圏に存在する潜在顧客・競合他社に関する詳細なデータを確認でき、そこからサービスやマーケティング施策の改善に繋げられます。

大阪・兵庫を中心にコンサルティング業を営むビズピット株式会社では、「商圏の定義」「商圏の特徴調査」「特徴に応じた施策の立案」の支援を行っています。自動車整備事業者の皆さまの売上向上に貢献できるよう尽力していきますので、ぜひお問い合わせください。



【引用】
※1
・総務省
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/index.html

※2
・総務省
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html

※3
・ZENRIN
https://www.zenrin.co.jp/product/category/gis/contents/annualincome/index.html

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