自動車整備事業者が情報の電子化を実施するメリットとは?

自動車整備業界では、請求書や見積書などを紙の書類で作成・管理するのが一般的です。しかし、アナログ書類の情報を電子化し、デジタル媒体で管理する体制を構築すれば、業務効率化や利益改善に繋がります。

本稿では、自動車整備事業者の皆さまに向けて、情報の電子化のメリットや具体的な手順について解説します。

【目次】
1 そもそも情報の電子化とは?
2 整備事業者が情報を電子化するメリット
 2-1 自動車業界では車検証のIC化も計画されている
3 情報を電子化する際の注意点
 3-1 業務のやり方が変わってしまう
 3-2 情報を電子化する際に把握しておくべきルールとは?
4 実際に情報を電子化する方法
 4-1 ①:データの仕様決め
 4-2 ②:テキストの読み取り
 4-3 ③:他ツールとの連携
5 まとめ

そもそも情報の電子化とは?

本稿における情報の電子化とは、前述の通り従来は紙で管理していた請求書や領収書といった「経理関係書類」、契約書や注文書のような「契約関係書類」をデジタルデータに変換して管理・運用することです。

これらの書類を紙で管理している自動車整備事業者は多いですが、作成から一定期間を過ぎるとほとんど確認する必要はなくなり、管理が手間でスペースも圧迫する点が業務の妨げとなります。

しかし、こういった書類は処分する訳にもいかないため、紙の書類の整理・管理に悩まれている自動車整備事業者も多いのではないでしょうか。ただでさえ自動車整備業界は人手不足の状態で、整備士が不足している事業場も珍しくはない昨今、煩雑な書類管理などに割くリソースはなるべく削減する必要があります。

そこで、紙で管理していた書類一式を電子化して管理すれば、多くの恩恵を受けられ、業務効率化や利益改善に繋がります。

整備事業者が情報を電子化するメリット

従来は紙で管理していた書類を電子化すれば、自動車整備事業全体のリソースにゆとりをもたらします。例えば、電子データは紙の書類に比べて検索性が高いので、マンパワーの削減や業務効率化にも繋がり、書類が劣化・紛失するような心配もありません。

電子化された書類は、用紙代やプリンターのトナー台といった物品費、紙の書類を保管していたスペースも不要になるので、物理的な余裕も生まれるでしょう。

自動車整備業界には変化が訪れていて、今後は「整備士不足」「次世代車の普及により整備業務の高度化」などの課題に向き合っていかなければなりません。リソースを確保することは大切な取り組みです。

コクヨが実施したペーパーレス化に関するアンケート調査(※1)によると、調査対象のうち、ペーパーレス化を導入した企業の7割が利便性を実感したことがわかっています。自動車整備事業者の皆さまも恩恵を感じられるでしょう。

自動車業界では車検証のIC化も計画されている

今後は、国土交通省によって車検証をIC化する計画(※2)があります。車検証にオーナーが所有する自動車の点検・整備情報などに関する電子データを格納する方法で、利活用が見込まれているのです。これもアナログで管理していた情報の電子化といえるでしょう。

IC化された車検証があれば、点検情報の参照やメーカーへの各種問い合わせなど、従来であれば時間がかかっていた業務を数秒で終わらせることも可能になりますので、自動車整備事業者も業務のスリム化などのメリットを得られます。

※車検のICカード化が自動車整備業車に与える影響。想定されている活用方法などをご紹介

情報を電子化する際の注意点

紙で管理していた情報の電子化は多くの恩恵がある一方、業務フローが変わることや、電子化に係る取り決めがあることを事前に把握しておく必要があります。

業務のやり方が変わってしまう

紙の書類をほぼ一律で電子データに置き換えて管理するようになれば、既存のアナログ書類をスキャナで読み込んだり、新しいツールの使い方に習熟したりと、新しい業務フローへの転換作業が求められます。

そのため、慣れない内は「従来のやり方のほうがよかったのでは」と感じる可能性も懸念されるでしょう。しかし、電子化したデータは検索性が高いというメリットがあります。

情報を電子化する際に把握しておくべきルールとは?

電子情報を管理する際にはいくつか把握しておくべき制度があり、「個人情報保護法」「電子帳簿保存法」「e-文書法」がそれに当たります(図1)。

図1.デジタルデータの管理に関わる法律
デジタルデータに関わる法律
(資料)「個人情報保護委員会」「財務省」「PEU」の公開情報をもとに、ビズピット作成。

個人情報保護法は、「特定の個人が識別できる情報」を個人情報と定義し、その流出を防ぐために努力する義務が管理者に発生する法律(※3)です。電子データが個人情報に該当する場合は、利用目的を指定した範囲内で利用するようにし、利用目的そのものも公表しなければなりません。

電子帳簿保存法は、「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法などの特例に関する法律」(※4)を指し、書類を電子化する際の解像度やカラー指定などがされています。

3つ目のe-文書法は、従来は紙で保管しなければならなかった文書を電子データで保存することが可能になる法律(※5)で、以下2つをまとめてe-文書法と呼ばれています。

・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律
・民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

実際に情報を電子化する方法

実際に紙の書類を電子化する場合は、「①データの仕様決め→②:テキストの読み取り→③:他ツールとの連携」の順で進みます。電子化した情報は、他のツールと連携することで顧客管理や売上分析が可能です。

電子化の手順

①:データの仕様決め

紙の書類を電子化する前段階として、「どのような形式のデータで保存するか」という仕様決めを行わなければなりません。電子化の仕様決めでは、前述の電子帳簿保存法などに準じつつ、下記の要項を決定します。

・スキャニングサイズ…A3、A4などの実寸サイズ
・解像度…200dpi、300dpiなどの画像の見やすさを決める数値。高すぎても、ファイルサイズが重くなってしまう
・階調…「カラー→グレースケール→白黒二値」のファイルの色調を決める要素
・ファイル形式…PDF、TIFF、JPEGなど、電子データのファイル形式
・ディレクトリ…パソコンに保管されているデータを分類・整理するための入れ物
・ファイル名…ファイルを分類するための名称で、書類名称だけでなく日付も記載するのが一般的

上記に加え、書類をOCR処理して電子データにするという選択肢もあります。OCR処理とは、画像データから文字を読み取って、テキストファイルに変換する技術です。OCR処理を行えば、経理ソフトとの連携や商圏分析による売上改善が見込めます。

OCRは専用のソフトによって実施できますが、それぞれ性能が異なります。読み取り可能な対象はテキストオンリーの文書・図面・雑誌などで、読み込み対象によって使用するソフトも変えなければなりません。

②:テキストの読み取り順

仕様決めが終わったら、以下の手順で紙の書類のテキストを読み取り、電子化します。

1.ホッチキスやクリップの取り外し
2.書類の仕分け
3.スキャンの実施
4.ファイル形式への変換(必要であればOCR処理もする)
5.統一したルールに基づいて、ファイル名とフォルダ名の作成
6.内容に不備がないか、電子データと元のファイルを精査

上記の工程はそこまで複雑な知識は必要ありませんが、社内リソースが不足している場合は、電子化作業においても外部の専門家への相談も検討しましょう。

③:他ツールとの連携

電子化したデータは、他システムと連携することで顧客管理や売上分析、オンラインで請求書や見積書などの発行が可能です。例えば、Squareなどに代表されるようなID-POS(注1)を使えば、決済管理を効率的に記録したり、顧客一人ひとりの属性を把握できる「顧客リスト」を利用できます。

さらに、ID-POSでまとめたデータを使って経理システムと連携すれば、会計業務をさらに簡便に行えるようになるでしょう。

※Square(スクエア)導入で効率的な顧客管理を実現しよう

注1:POSとは「Point-of-Sales」の略で、ID-POSとは誰がどのように決済を行ったか確認できるシステム

まとめ

従来、紙で管理していた書類の情報を電子化すれば、検索性の向上や管理コストの削減に繋がり、業務効率化や利益改善を果たせます。

ビズピット株式会社でも所有ソフトでの電子化や電子化作業のサポート、独自開発のシステムを使ったデータ分析などを提供しています。今冬リリース予定のサービスを使えば購買情報の電子化も可能ですので、自社で業務効率化を図りたいとお考えの自動車整備事業者の方は、ぜひお問い合わせください。



【引用】
※1
・コクヨ
https://www.kokuyo-furniture.co.jp/solution/mana-biz/2021/06/7-3.php

※2
・国土交通省
https://www.mlit.go.jp/common/001349296.pdf

※3
・個人情報保護委員会事務局
https://www.city.kami.lg.jp/uploaded/attachment/14846.pdf

※4
・国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm

※5
・首相官邸
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/others/e-bunsyou.html

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