
「整備士の採用がどんどん難しくなっている…」
そうした課題を抱えている整備工場の経営者の方も多いのではないでしょうか?
日本の自動車整備業界では深刻な人材不足が続いており、外国人雇用が現実的な選択肢として注目を集めています。
国としても外国人整備士を受け入れる制度の整備を進めており、今では複数の在留資格を活用して外国人整備士を雇用することが可能です。
本記事では、自動車整備業界の現状と未来を見据え、外国人雇用に活用されている主な制度(技能実習・特定技能・技人国(技術・人文知識・国際業務))の違いや活用ポイントを詳しく解説します。
この記事で分かること
- 整備業界で活用される外国人雇用制度
- 技能実習・特定技能の違いと使い分け方
- 制度選びで失敗しないための比較ポイント
外国人整備士を雇用する主な制度
自動車整備業で外国人を雇用する場合、主に以下の3つの制度が対象です。
技能実習制度
技能実習制度は、日本が先進国として培ってきた技能、技術、知識を開発途上地域などへ移転し、その国の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としています。これは、日本の国際貢献における重要な役割の一つです。
当初、技能実習制度が1993年に創設された際は、対象となる職種が限られていました。
その後、産業界からの要望や国際貢献の必要性などを踏まえ、段階的に対象職種が拡大されてきました。自動車整備業もその流れの中で、日本の高い整備技術を開発途上国へ移転する意義が大きいと判断され、対象に加えられた経緯があります。
技能実習制度の主な特徴は次のとおりです。
- 在留期間:最長5年(1号:1年、2号:2年、3号:2年)
- 転職:原則不可(受け入れ先の変更は困難)
- 支援機関:監理団体が指導・管理
- 必要要件:特別な試験要件は無いが、事前研修がある
人材の長期育成や企業独自の教育カリキュラムとの親和性が高く、一貫した育成環境を構築できる点が特徴です。
この制度の注意点は、この制度を単なる「安価な労働力の確保」と捉えてしまうと、思わぬトラブルに見舞われたり、制度本来の趣旨から外れてしまったりする可能性があります。
例えば、実習生の賃金や労働条件は、原則として日本人労働者と同等でなければなりません。不当な扱いに対しては、厳しい罰則が科せられます。また、技術移転に関係のない単純作業を実習生にさせることは禁じられています。
そして近年、適正な受け入れと技能移転が行われているかどうか、監査や指導が強化されています。
もちろん、結果として日本の企業にとっては、実習期間中の労働力の確保につながる側面もあります。しかし、それはあくまで副次的な効果であり、主目的は国際貢献である点を押さえておく必要があります。
この制度を利用するには、その趣旨・目的と成り立ちを正しく理解することが重要です。
特定技能(特定技能1号・2号)
特定技能制度は、国内の人手不足が深刻な特定の産業分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れることを主目的とした在留資格です。技能実習制度が国際貢献を主眼とするのに対し、特定技能制度は日本の労働力不足への対応が明確な目的となっています。
特定技能制度は、近年の日本社会の構造変化と、それに伴う産業界からの強い要請を受けて2019年に創設された新しい制度です。そして、自動車整備業も、人材不足が顕著であることから特定技能の対象分野に含まれています。
特定技能制度の主な特徴は次のとおりです。
- 在留期間:最大5年(2号への移行で更新可能)
- 転職:可能(受け入れ機関が変更となる場合、再申請が必要)
- 支援機関:登録支援機関による生活・就労サポートが義務
- 必要要件:日本語能力試験N4以上、技能評価試験の合格
特定技能制度は「抜本的な人手不足解消」と「現場を支える即戦力確保」を目的に生まれた制度です。中小規模整備工場にとって、安定した経営とサービスの維持・拡大を図る上で、今後ますます重要な役割を果たしていくでしょう。
技人国(技術・人文知識・国際業務)ビザ

技術・人文知識・国際業務ビザ(通称「技人国ビザ」)は、専門的な技術や知識、あるいは外国の文化に根ざした思考や感受性を必要とする業務に従事する、基本的にはいわゆる「ホワイトカラー」の外国人材を受け入れるための在留資格です。単純労働ではなく、一定水準以上の専門性が求められる点が最大の特徴です。
技人国ビザを取得するためには、原則として関連する分野での大学卒業以上の学歴、または日本の専門学校を卒業し「専門士」の称号を得ていること、または10年以上の実務経験(国際業務の場合は3年以上)が必要です。このため、即戦力となる高度な知識やスキルを持つ人材を確保できる可能性があります。
自動車整備工場でも、自動車工学に基づく用品の設計や整備技術の開発、業務のマネジメント、国際取引など、単なる現場作業を超えた役割を担うポジションに対して技人国ビザの取得が認められる場合があります。
具体的には、海外で自動車整備士として働いていた外国人や、自動車メーカーで開発していた外国人、日本の専門学校を卒業した外国人などが該当する可能性があります。
技人国ビザの主な特徴は次のとおりです。
- 在留期間:1年、3年、5年などがあり更新可能
- 転職:可能(同分野の業務に限る)
- 受け入れ企業に審査有り
- 申請手続きが煩雑
技人国ビザは、「専門性」がキーワードです。大学卒業程度の学歴や一定期間以上の実務経験などが求められ、誰でも取得できるわけではありません。これは、日本の産業がより高度な知識や技術を必要としている分野で、国内だけでは確保が難しい専門人材を海外から受け入れることを意図しているためです。
技人国ビザの申請は、特定技能や技能実習とは異なり、個別の企業の判断と責任において進めます。他の制度に比べて雇用までのハードルが高いと言えます。
申請手続きが煩雑で専門的な知識が必要となるため、行政書士などの専門家に相談することも有効な手段です。
関連情報:技能実習制度とは?整備業界での活用事例と注意点を解説
関連情報:特定技能制度とは?整備士が対象になる条件と活用方法
制度別の特徴比較
以下は、各制度の特徴を簡潔にまとめた表です。
| 制度名 | 対象 | 在留期間 | 転職可否 | 支援機関等 | 特徴 |
| 特定技能 | 即戦力外国人 | 最大5年(2号では更新可能) | 可 | 登録支援機関 | 日本語・技能試験に 合格が必要 |
| 技能実習 | 技能習得を目的とする 外国人 | 最長5年 | 不可 | 監理団体 | 実習終了後、母国 への帰国が前提 |
| 技人国 | 特定分野の専門知識や技術を持つ外国人 | 更新可能 | 可 | 行政書士等 | 雇用までのハードルが高い |
この比較からも分かるように、「即戦力」としてすぐに働いてもらいたい場合は特定技能が向いており、「長期育成」や社会貢献を重視する企業には、技能実習が適しています。技人国は申請の手続きなどハードルが高く、それほど多く活用されてはいません。
制度の選定で考慮すべき4つの観点
制度を選ぶ際は、「即戦力性」「定着性」「制度の柔軟性」「専門性」の4つの視点から検討することが重要です。
- 即戦力性:採用後すぐに業務を任せたいなら、特定技能がおすすめです。特定技能は事前に試験に合格しているため、ある程度の技術と日本語力が保証されています。
- 定着性:長期的な人材育成と企業文化へのなじみやすさを重視する場合は、技能実習が有効です。初期段階から段階的に育成することで、将来的な戦力として定着が見込めます。
- 制度の柔軟性:転職や更新が可能な特定技能制度は、事業の変化に対応しやすく、複数拠点を持つ企業にも適しています。
- 専門性:最も高い技術や専門性を望む場合は、技人国がおすすめです。
こうした観点を踏まえて、自社の経営方針や現場の人材ニーズに応じた制度を選ぶことが、外国人雇用を成功させるポイントです。
整備業界で活用されている制度の実態
特定技能の導入が急増中
2019年の制度開始以降、特定技能制度の利用者数は年々増加しています。
法務省の統計※1によると、2024年6月時点で「自動車整備」分野での特定技能在留外国人数(合格者数)は約3,300人に達し、年々増加しています。
背景には、既存の技能実習制度では即戦力が得にくいという課題がありました。
特定技能では、採用時に技能評価試験を実施するため、企業側は一定のスキルを持った人材を採用することが可能です。
採用後のミスマッチも軽減されるというメリットがあります。
また、登録支援機関との連携により、住居の手配、生活支援、日本語学習支援までトータルでサポートできる体制が整っている点も、導入企業の増加につながっています。
技能実習も依然として根強い需要
制度上の制約が多い技能実習ですが、長年の実績とノウハウが蓄積されており、監理団体との連携体制も確立されています。特に地方の中小整備工場では、人材確保の安定性を重視する傾向が強く、技能実習制度を活用している企業も少なくありません。
技能実習制度は「育成」を前提としており、整備士としての基礎からしっかりと教育するプロセスが企業の方針と一致する場合、非常に有効な選択肢です。また、近年では技能実習から特定技能への移行も進んでおり、優秀な人材を継続的に活用する道も開けています。
技人国ビザは高いハードル
整備工場においては、まだ技能実習や特定技能ほど一般的な活用事例は多くないかもしれません。しかし、輸入車を扱う整備工場では高度な整備技術を持つ外国人エンジニアの招請、海外メーカーとの技術提携に関わる業務、車両の輸出入を行う整備工場では外国人顧客対応の専門部署の立ち上げなど、事業の高度化や差別化を図る上で、技人国ビザの活用は有効な選択肢となり得ます。
また、近年、留学ビザで日本の自動車整備専門学校を卒業する外国人が増加しています。彼らの多くは、卒業後に技人国ビザに切り替えて日本での就職を目指しているため、そのような外国人を採用する方法があります。
制度ごとのメリット・デメリット
| 制度 | メリット | デメリット |
| 特定技能 | ・即戦力人材を確保できる ・転職可能で柔軟性がある ・支援体制が充実 | ・日本語力や技能試験に合格する必要がある ・採用までの準備が煩雑 |
| 技能実習 | ・長期育成型の雇用が可能 ・制度運用の実績が豊富 | ・転職不可でミスマッチ時のリスクが高い ・原則、実習後は帰国 |
| 技人国 | ・高度な人材の確保 ・長期的戦力 ・インバウンド対応 | ・採用コスト・時間 ・申請手続きの煩雑さ ・業務内容の限定 |
選ぶ制度によって、採用にかかる時間、コスト、人材の即戦力性が大きく異なります。
自社が求める人物像や、育成・戦力化にかけられる時間的余裕を考慮することが大切です。
まとめ|自社に合った制度選びがカギ
整備業で外国人を雇用するなら、「特定技能」が最も現実的な制度として注目されています。
即戦力人材を求める企業にとって、日本語と整備スキルを備えた人材を採用できる特定技能は非常に有効です。
一方で、人材の育成に時間をかけられる企業、長期的に信頼関係を築いていきたい企業には、「技能実習」が適していると言えるでしょう。
監理団体を通じて計画的に受け入れることで、安定した人材育成が可能です。
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格は、取得のハードルは高いものの、専門的な業務の実施において多くのメリットがあります。
いずれの制度も、それぞれにメリット・デメリットがあり、導入には制度理解と準備が不可欠です。
制度選びで失敗しないためには、自社の方針や人材戦略に応じて最適な選択を行いましょう。
関連情報:外国人整備士雇用の基礎知識はこちら
【引用】
※1 特定技能在留外国人数の公表等
https://www.moj.go.jp/isa/applications/ssw/nyuukokukanri07_00215.html









