自動車整備業者も知っておくべき電子帳簿保存法を徹底解説

電子帳簿保存法は、紙での保存が義務づけられていた帳簿書類を電子データで保存することを認めた法律で、事業規模に関係なくすべての企業や個人事業者が対象です。そのため、自動車整備業者や業務委託契約を結んでいる自動車整備士、出張整備士も、帳簿書類を電子データで保存できるように情報の電子化などの対応が必要になります。

しかし、電子帳簿保存法についてよく理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、この記事では自動車整備事業者の皆さまに向けて、電子帳簿保存法の概要や具体的な準備について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

なお、自動車整備事業者の方が情報の電子化を実施する方法については、以下の記事で解説しています。ぜひ参考にしてください。

自動車整備事業者が情報の電子化を実施するメリットとは? - ビズピット株式会社

【目次】
1 自動車整備業者も知っておくべき電子帳簿保存法とは
 1-1 電子帳簿等保存
 1-2 スキャナ保存
 1-3 電子取引
2 電子帳簿保存の要件
3 企業だけでなく個人事業主も対象?
4 自動車整備事業者が電子帳簿保存を行うための準備
 4-1 義務化までの期日を把握する
 4-2 社内の電子取引を把握する
 4-3 データの保存方法を決める
 4-4 データの保管場所を決める
 4-5 書類のスキャン方法などを決める
 4-6 事務処理規程を作る
5 まとめ

自動車整備業者も知っておくべき電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は1998年に成立した法律ですが、令和3年度税制改正で事前申請の廃止やタイムスタンプ要件の見直し、要件緩和など、電子帳簿保存法の大幅な見直しが行われました。

その中で特に重要な改正が、電子取引に関する請求書などの書類を紙で保存するのではなく、電子データでの保存が義務付けられたことです。システムの問題などですぐに実施できない企業や個人事業主のために、2023年12月31日まで猶予期間が設けられました。自動車整備業者や個人事業主である業務委託契約の自動車整備士、出張整備士の方々は、猶予期間が終わるまでに請求書を電子データで保存できるようにしなければなりません。

データを正しく保存するためには、電子帳簿保存法の概要を正しく理解する必要があります。ここでは、電子帳簿保存法で定められた保存方法や要件などについて詳しく解説していきます。

電子帳簿等保存

電子帳簿保存法により認められている保存方法は3種類あり、そのひとつが「電子帳簿等保存」です。電子帳簿等保存とはコンピューターなどで電子的に作成した帳簿書類を保存するものです。保存できる書類や帳簿は決まっています。

保存の対象となる主な帳簿や書類を以下の表にまとめましたので、ご確認ください(※1)。

図1.電子帳簿保存の対象となる帳簿・書類
電子帳簿保存の対象となる帳簿・書類
出典:はじめませんか、帳簿書類の電子化!(令和3年11月)|国税庁

ちなみに、上記の書類は電子帳簿保存でしか保存できないので注意するようにしてください。

スキャナ保存

スキャナ保存も電子帳簿保存法により認められている保存方法です。自社が作成した書類や取引先から受け取った紙の請求書などをスキャンして、電子データで保存します。

ただし、検索機能の確保やタイムスタンプの付与など、一定の要件を満たしていることが必要です。また、電子帳簿保存と同様にスキャナ保存できる書類は決まっているので注意してください。

保存の対象となる主な書類を以下の表にまとめましたので、ご確認ください(※2)。

図2.スキャナ保存の対象となる書類
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図2.スキャナ保存の対象となる書類" max-width="100%" >
出典:​​はじめませんか、書類のスキャナ保存!(令和3年11月)|国税庁

なお、スキャナーだけでなく、スマートフォンのカメラやデジタルカメラなどで撮影した画像データでも問題ありません。その場合、以下の要件を満たしている画像に限られます(※2)。

・解像度が200dpi以上による読み取りができること
・カラー画像による読み取りができること(一般書類の場合はグレースケール画像でも可)
出典:​​はじめませんか、書類のスキャナ保存!(令和3年11月)|国税庁

上記の要件を満たしていない画像データは正しく保存できていないことになります。必要な要件を覚えておきましょう。

電子取引

電子取引も電子帳簿保存法により認められている保存方法です。注文書や契約書などの取引情報を紙ではなく電子上で行なった場合、その電子データをそのまま保存します。

2022年1月1日の改正によって、スキャナ保存と同様に検索機能などの要件を満たすことが義務化されています。要件を満たしているかどうか、注意が必要です。

とはいえ、現段階で対応できていなくても問題はありません。対応が間に合わないことを想定して2年の猶予期間が設けられているため、2023年12月31日までに対応すればよいでしょう。

電子帳簿保存の要件

電子帳簿保存法では、電子帳簿保存の要件として「真実性の確保」と「可視性の確保」を規定しています。具体的には以下の5つになります(※3)。

真実性の確保
・訂正・削除履歴の確保(帳簿)
記載事項の訂正や削除、追加を行った場合、その内容が確認できるシステムを使用することが必要です。
・ 相互関連性の確保(帳簿)
ある帳簿に関連する他の帳簿がある場合、その関連性を確認できるようにすることが必要です。
・関係書類等の備付け
保存に使用するシステムの説明書を備え付けておくことが必要です。

可視性の確保
・見読可能性の確保
保存するデータをすぐに立ち上げて確認できるようにすることが必要です。
・検索機能の確保
取引日時、勘定科目、取引金額などを、定められた方法で検索できるようにしておくことが必要です。
出典:電子帳簿保存時の要件|国税庁

ちなみに、スキャナ保存の要件は以下の表で確認できます(※4)。

図3.スキャナ保存の要件
スキャナ保存の要件
出典:電子帳簿保存法一問一答

上記のように、書類の種類によって異なる規定があることを理解しておきましょう。

企業だけでなく個人事業主も対象?

電子帳簿保存法は「公益法人・法人税を納める必要がある人・所得税を負担する個人事業主・事業に従事する人」に適用されます。組織や個人、事業規模は関係ありません。

そのため、自動車整備業者だけでなく、業務委託契約を結んでいる自動車整備士や出張整備士も、電子帳簿保存法に沿った対応をする必要があります。

ちなみに、電子帳簿保存法により義務付けられた電子取引も同様です。

自動車整備事業者が電子帳簿保存を行うための準備

電子帳簿保存法によって定められた電子取引やスキャナ保存は、自動車整備業者も対応しなくてはなりません。そのため、書類や帳簿などを電子データで保存できるようにしておく必要があります。

ここでは、電子化を行うための準備について詳しく解説しますので、参考にしてみてください。

義務化までの期日を把握する

まずは義務化までの期日を把握しておく必要があります。電子上でやり取りした請求書や領収書などの保存が完全に義務化されるのは2024年1月からです。そのため、猶予期間が終わるまでに電子取引のデータを保存できる体制を整えることが重要になります。

社内の電子取引を把握する

自社で行われている電子取引を把握して、リストアップする必要があります。電子取引の数が膨大になるケースもあるため、最初に把握しやすい経理関係の領収書や請求書から取り組むのがおすすめです。

確認しておく必要があるのは以下の項目になります。

・書類の種類
・PDFなどのデータの種類
・取引先
・保存方法
・件数

上記を把握しておくことで今後の対応がスムーズになるため、手間はかかりますが必ず実施しましょう。

なお、電子データではなく紙でやり取りをしている取引先がある場合、電子データで受け取れるように依頼しておきましょう。紙と電子データが混在すると業務が複雑になるため、避けるようにしてください。

顧客情報などを電子化するのに便利なシステムを、以下の記事で紹介しています。ぜひご確認ください。

Square(スクエア)導入で効率的な顧客管理を実現しよう

データの保存方法を決める

電子データを保存するためには、定められた要件を満たす必要があります。そのため、以下のいずれかの方法で運用しなければなりません。

・取引先か自社でタイムスタンプを付与する形で運用する
・訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用する

タイムスタンプは手間がかかりませんが、システムの導入が必要になるため、コストがかかります。一方、規定を定める場合は、システムへの投資は必要ありません。このように、一長一短があるため、どちらの運用方法が良いのかは慎重に検討するようにしましょう。

データの保管場所を決める

電子取引のデータを保存するためには、「日付、金額、取引先」などの条件に基づいて書類を検索する機能が不可欠です。

では、どのような方法で保存すれば良いのでしょうか?電子データの保存方法には、主に2つの方法があります。

・伝票収集・保管システムを利用する
・自社のサーバー上の指定されたフォルダに情報を保管する

自社のサーバー上のフォルダに保存する場合、検索機能を容易にするためファイル名で検索できるような名前を付けるか、エクセルで索引帳を作成する必要があります。ただし、手間がかかってしまいますので、生産性を考えると簡単に検索できる保管システムを導入するのがおすすめです。

書類のスキャン方法などを決める

取引先が紙の請求書や領収書を発行している場合は、スキャナを利用して電子化するようにしましょう。

書類を受領後、仕訳を入力する前にスキャンしておけば、電子取引と同じ業務フローになります。書類を電子データで保存するにはスキャナが必要ですので、準備しておきましょう。

なお、自動車整備事業者がスキャナを導入するメリットや使い方などは、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

スキャナを使った経費削減の方法|具体的なやり方は?

業務フローを検討する

電子データを一度紙に印刷して承認や経理作業を行なっている場合は、業務フローをよく検討する必要があります。電子データとして保管する必要があるので、電子データを紙に印刷しない業務フローに変えることが重要です。

また、作成した業務フローに問題が生じるケースもあるため、運用上の問題がないか、よく検討するようにしてください。

あわせて請求書発行のフローも検討しておくことをおすすめします。取引先から電子取引を依頼される可能性があるうえに、電子化したほうが発行にかかる手間などを削減できます。

事務処理規程を作る

タイムスタンプではなく、事務処理規程を定めて運用する場合は、規定の作成が必要です。しかし、どのように規定を作成すればよいのかわからない方もいると思います。国税庁が事務処理規定のサンプルを公開していますので、参照するのがよいでしょう。

まとめ

自動車整備事業者の方にも影響がある電子帳簿保存法について、正しく理解しておくことが重要です。

この記事で解説したポイントは以下になります。

・電子帳簿保存法により認められている保存方法には、「電子帳簿保存・スキャナ保存・電子取引」がある
・保存方法によって要件や利用できる帳簿、書類が異なる
・電子取引のデータ保存は義務化されているが、2023年12月31日までは猶予期間として認められている
・企業や個人事業主、事業規模に関係なく対象になる

上記の内容をよく理解したうえで、改正電子帳簿保存法に対応できるように準備していきましょう。

自動車販売、整備店に特化した事業支援サービスを提供するビズピットでは、電子帳簿保存法に関する相談も受け付けています。例えば、帳簿を電子化するスキャナの無償試用や格安でご提供することも可能です。初回相談は無料ですので、データの保存や事務処理規定の作成に悩まれている方など、以下からお気軽にご相談ください。




【引用】
※1
・はじめませんか、帳簿書類の電子化!
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_01.pdf

※2
・はじめませんか、書類のスキャナ保存!
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf

※3
・電子帳簿保存時の要件|国税庁
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm

※4
・電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0021006-031_02.pdf

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