自動車整備業界では、若者の自動車離れなど自動車を所有するユーザーの減少にともない、顧客獲得が課題のひとつとなっています(※1)。
しかし新規顧客を増やさなければいけないものの、自動車整備士の人材不足により、顧客獲得業務にまで手が回らないことも多いのが実情です。そこで、顧客の獲得やフォロー対応を効率化させたいときに顧客管理ツールが役立ちます。顧客管理ツールを導入することで、顧客の情報をデータ化して管理できるようになるので、DXの推進にもつながります。無料プランを提供しているツールもあるため、コストをかけずに利用できます。顧客管理ツールを導入することは、人手が限られているなかで顧客管理やフォローをおこなう際のひとつの解決策といえるでしょう。
本記事では、自動車整備業界で効率的な顧客獲得や管理に活用できる顧客管理ツールを3つ取り上げ、比較しながら解説します。新規の顧客獲得や既存顧客のフォローを効率化する方法をお探しの方は、是非ご一読ください。
顧客管理を効率化する方法とは
自動車整備業界では、顧客獲得や入庫のフォローなどが売上に直結します。そのため、顧客管理が重要です。
顧客管理を効率化するためには、以下の3つの顧客管理ツールを導入するとよいでしょう。
- マーケティング支援ツール:MA(マーケティングオートメーション)
- 営業支援ツール:SFA(営業支援システム)
- 顧客情報管理ツール:CRM(顧客管理システム)
たとえば、以下の工程で顧客管理ツールが役立ちます。
【顧客管理ツールの活用シーン】
ステータス | 見込み顧客の獲得 | 受注までの営業支援 | 受注した顧客の管理・フォロー |
活用ツール | MA (マーケティングオートメーション) | SFA (営業支援システム) | CRM (顧客管理システム) |
主な機能 | ・見込み顧客管理 ・問い合わせフォーム作成 ・顧客のスコアリング ・メール配信 | ・案件管理 ・行動管理 ・予実管理 ・ToDoリスト ・名刺管理 ・顧客管理 | ・顧客の情報管理 ・ユーザー行動分析 ・プロモーション管理 ・マーケティング支援 ・問い合わせ管理 |
顧客管理の効率化につながる、MAやSFA、CRMについて詳しく解説します。
なお、顧客情報などの書類を電子化するメリットを知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
※自動車整備事業者が情報の電子化を実施するメリットとは?
MA(マーケティングオートメーション)とは
MA(マーケティングオートメーション)とは「Marketing Automation」の頭文字を取った言葉で、見込み顧客の獲得や育成を支援するツールを指します。
MAツールには、見込み顧客の情報をまとめて管理したり、顧客の検討度合いを可視化したりする機能があります。そのため、優先的に連絡するべき見込み顧客を見極めてアプローチできるようになります。
たとえば、見込み顧客の属性や車両情報などにあわせてメルマガ配信することが可能です。MAツールによっては問い合わせフォームを作成できる機能もあるため、自動車整備の見積もり依頼や申し込みを受け付ける窓口をかんたんに作れます。
MAツールを導入することで、今後受注につながりそうな見込み顧客を獲得するためにかかっていた工数を削減できるようになるでしょう。
SFA(営業支援システム)とは
SFA(営業支援システム)とは、「Sales Force Automation」の頭文字を取った言葉で、日本語にすると「営業支援システム」といいます。
SFAツールでは、問い合わせがあった企業や見込み顧客の情報を管理したり、営業状況をまとめて情報を一元管理できたりします。そのため、受注までの営業業務を効率化したい場合に役立ちます。
SFAツールを利用することで、見込み顧客から反響があった対応や質問への返信内容などを社内で共有することが可能です。営業戦略がたてやすくなり、営業業務の生産性向上や属人化を防ぐことにもつながります。
SFAツールは、獲得した見込み顧客との商談、契約につなげたい際に活用できるツールといえます。
CRM(顧客管理システム)とは
CRM(顧客管理システム)は「Customer Relationship Management」の頭文字を取った言葉で、日本語に訳すと「顧客関係管理」となります。
CRMツールでは、購入や問い合わせ履歴など顧客とのやりとりを顧客情報に紐付けて一元管理できます。そのため、顧客にあわせたフォローをすることが可能です。
自動車整備業界でCRMツールを導入すると、顧客情報を車検や整備予約・フォロー履歴や顧客の検討段階などと紐付けて管理することができます。
省人化に加えて、顧客管理やフォロー業務を効率化できます。そのぶん、顧客一人当たりにかけられる時間が増えるため顧客対応の質が上がり、顧客満足度の向上やリピーター獲得にもつながるでしょう。
CRMツールを活用して優良顧客を見つける方法をより詳しく知りたい方は、以下の記事をお役立てください。
※顧客管理・顧客情報の分析による優良顧客の見つけ方を解説
自動車整備業界でおすすめの3つの顧客管理ツールを比較
自動車整備業界で業務効率化する際に、おすすめの顧客管理ツールを3つ紹介します。今回はコストをかけずに導入できる、無料プランを設けているツールを比較していきましょう。
無料プランで利用できる機能などを比較した結果は、以下のとおりです。
【顧客管理ツールの比較】
サービス名 | BowNow | HubSpot(Sales Hub) | Zoho CRM |
価格 | フリープランあり ・12,000円~/月額 | 無料版あり ・5,400円~/月額 | 無料プランあり ・1,680円~/1ユーザー ・月額(15日間の無料お試しあり) |
目的 | MA:見込み顧客の獲得 | SFA:受注までの営業支援 | CRM:受注した顧客の管理・フォロー |
顧客情報の管理 | 〇 見込み顧客の発掘・管理 | 〇 | 〇 |
商談・案件管理 | 〇 | 〇 | 〇 |
メルマガ等でのCookie情報取得 | 〇 | × | △ 行動追跡可 |
拡張性 | (〇) ※追加オプション30,000円でSalesforceと連携可能 | 〇 ※73アプリと連携可能 | 〇 ※Excel形式やCSV形式、vCard 形式のデータのインポートに対応 |
無料プランのサポート | 〇 ※1to1サポートを除く | △ ※コミュニティのみ | △ ※サポート窓口が英語のみ |
使いやすさ | ★★★★★ | ★★★ | ★★★★ |
それぞれ無料プランを提供しているため、初めて顧客管理ツールを導入する方に適しています。後に有料プランに移行して運用していく場合は、Zoho CRMが月単位での契約が可能で費用を抑えて運用していける価格といえそうです。
機能面では、BowNowは見込み顧客の発掘などのMAツールで必要な機能を無料プランで利用できるので、MAツールを試して顧客獲得を進めていきたい企業におすすめです。
サポートに関しては、HubSpot(Sales Hub)とZoho CRMは海外のツールのため、無料プランではサポートが基本的に英語対応です。一方BowNowは、国産ツールのため無料プランでもサポート対応が手厚く、万が一の際にも安心です。日本人が感覚的に扱いやすいツールは、BowNowといえるでしょう。
それでは、ツールの詳しい概要をひとつずつ紹介していきましょう。
【MAツール】BowNow

引用元:BowNow
サービス名 | BowNow |
価格(税抜) | ・フリー :0円/月額 ・エントリー :12,000円/月額 ・ライト :24,000円/月額 ・スタンダード:36,000円/月額 ・ビジネス :要問い合わせ |
目的 | MA:見込み顧客の獲得 |
主な機能 | 見込み顧客管理・リスト化、フォーム作成、 メール配信、追客アラート機能、 商談履歴管理、メルマガ等でのCookie情報取得など |
サポート | 導入支援、勉強会、技術支援、1to1サポート(有料プランのみ)など |
拡張性 | 追加オプション30,000円でSalesforceと連携可能 |
使いやすさ | ★★★★★ |
BowNowは国産のMAツールです。フリープランで利用できる機能が多く、MAを一度試してみたい企業に最適です(※2)。
フリープランでは、以下の機能を利用できます。
- メールの一斉送信
- 問い合わせフォーム作成
- Webサイトにアクセスした企業や個人の特定・分析
- 顧客ステータスの自動分類
- 追客アラート機能

引用元:BowNow
BowNowにはWebサイトを閲覧している企業や個人をIPアドレスから特定する機能やフォーム作成機能があるため、サービスに興味を持っている見込み顧客をリスト化し、効率的にアプローチが可能です。
またメルマガ配信などでURLを送付し、URLを踏んだユーザーのCookie情報を取得します。Cookie情報からユーザーがどのページをどのくらい閲覧したのかわかるため、見込み顧客を効率よく見つけられます。
さらに、追客アラート機能を利用できるので、予約や問い合わせ、見積もり依頼があったものの受注につながらなかった顧客行動を把握して、検討している段階にタイミングよく訴求できます。
エントリープランから別途オプション費用30,000円追加することで、Salesforceと連携することが可能です。ビジネスプランの場合は、追加オプションを申し込まなくても利用できます。
フリープランから利用を開始して有料プランに移行する場合は、最低利用期間が1年間に設定されています。1年以上利用することを前提にプラン変更をおこないましょう。
なお、自動車整備事業の再開発をおこなうコンサルティング企業であるビズピットからお申し込みいただくと、特別価格でご提供が可能です。BowNowをご検討の方は、お気軽にお問い合わせください。
https://bizpit-kk.com/contact/
【SFAツール】HubSpot(Sales Hub)

サービス名 | HubSpot(Sales Hub) |
価格(税抜) | ・無料版 :0円/月額 ・Starter :5,400円~/月額 ・Professional:54,000円~/月額 ・Enterprise :144,000円~/月額 |
目的 | SFA:受注までの営業支援 |
主な機能 | 商談管理、見積もり作成、レポート作成、目標管理など |
サポート | ・無料版:ユーザーコミュニティ ・有料プラン:日本語でWebやメール、電話などから問い合わせサポート、 無料学習コンテンツ、導入支援プラン、ユーザーコミュニティ |
拡張性 | 73アプリとの連携が可能 |
使いやすさ | ★★★ |
HubSpotでは、顧客管理や営業支援など用途にあわせてさまざまなソフトウェアを提供しています。Sales Hubは、HubSpotのなかでも営業支援に特化しているSFAツールです(※3)。
Sales Hubでは、無料版を含めて4つのプランが用意されており、無料版では以下の機能を利用できます。
- 商談・案件管理
- 見積書作成
- ミーティング設定
- レポート作成

Googleカレンダーなどのカレンダーアプリとの連携が可能で、事業所や担当者のスケジュールをリンクで顧客に共有できるので、商談などの予約をスムーズに設定できます。商談予約のために、顧客と何度もやり取りする手間がかかりません。
また、HubSpotのアプリマーケットプレイスを利用すると、GoogleカレンダーやSlack、iCloudなど73の日本語対応アプリとの連携が可能です。
Sales Hubは、営業活動を分析して見える化できるため、効率的に受注につなげる支援をしてくれます。
ただし、無料版ではサポートに難があります。ユーザーから届いた質問への回答やアドバイスが見られるコミュニティしか利用できず、電話やメールでの問い合わせができません。Sales Hubは海外で作られているツールのため、無料版では基本的に日本語でのサポートが受けられないことを理解しておきましょう。
【CRMツール】Zoho CRM

引用元:Zoho CRM
サービス名 | Zoho CRM |
価格(税抜) | ・無料 :0円/月額(3ユーザーまで) ・スタンダード :1,680円/月額(1ユーザー) ・プロフェッショナル:2,760円/月額(1ユーザー) ・エンタープライズ :4,800円/月額(1ユーザー) ・アルティメット :6,240円/月額(1ユーザー) |
目的 | CRM:受注した顧客の管理・フォロー |
主な機能 | 見込み客管理、案件管理、取引先管理、タスク・電話ログ管理など |
サポート | 日本語でのサポート窓口(有料プランのみ)、ウェビナー、ユーザーコミュニティ |
拡張性 | Excel形式やCSV形式、vCard 形式のデータのインポートに対応 |
使いやすさ | ★★★★ |
Zoho CRMは、世界25万人以上に利用されているCRMツールです。無料を含めて5つの料金プランがあり、無料プランでは以下の機能を利用できます(※4)。
- 見込み顧客管理
- 取引先・商談管理
- タスク・電話ログ管理
- サポート作成

引用元:Zoho CRM
無料プランは利用できる機能が少なく、上位プランを選ぶほど営業を支援するSFA機能が追加され、ストレージの容量がアップする仕組みとなっています。そのため、Zoho CRMを導入する際は、有料プランに移行することを前提に利用するとよいでしょう。
CRMツールは一般的に年間契約となる場合が多いですが、Zoho CRMでは1ユーザーから月単位で契約して使用できます。他のCRMツールにくらべ、コストを抑えて導入できるのが、Zoho CRMのメリットといえます。
ただし、無料プランではサポート窓口が英語での対応となるので、留意しておきましょう。
顧客管理ツールを選ぶときの注意点3つ

MAやSFA、CRMなどのツールは、どのような点に気をつけて選べばよいのでしょうか?
顧客管理ツールを選定するときの注意点を3つ解説します。
長期的に利用できるプランを選ぶ
顧客管理ツールを導入する際には、費用の負担が少なく、長期的に利用できる価格のものを選ぶことが重要です。
顧客管理ツールのなかには、無料プランやお試し期間を設けているものもあるため、まずは無料プランを導入して顧客管理の自動化に取り組むことがおすすめです。コストをかけずに、顧客管理の効率化が実現できます。ただし無料プランによっては、使用できる機能に制限があるため、利用したい機能が使用可能か確認しておくと安心です。
顧客管理ツールによって、無料プランのほかにさまざまなプランが用意されています。有料プランに移行する場合は、費用対効果を検討してから継続して利用できる価格のプランを選ぶとよいでしょう。
使いやすさを事前に確認する
顧客管理ツールを選ぶときには、使いやすさを事前に確認しておきましょう。
たとえば、自社で利用している自動車整備システムや経理ソフトなどと連携できるかどうか、Excel形式・CSV形式のデータを取り込めるかどうかなど、自社の業務環境とうまく連携できるかを見ておく必要があります。
顧客管理ツールによっては導入前に無料トライアルを試せる場合もあります。作業する予定の担当者に実際に触ってもらい、使用感などを確認しておくと、導入したものの使いこなせないといった失敗を未然に防げるでしょう。
導入前に運用方法を決めておく
MAやSFA、CRMは、ツールによって見込み顧客の獲得や受注までの営業、顧客のフォロー対応など役立つ場面が変わります。そのため、どのような業務を効率化させたいのか事前に社内で方針を決めておくことが大切です。
効率化したい業務内容にあわせてツールを選定し、どの従業員が対応するのか、作業時間をどの程度確保すべきかなどの運用体制を決めておくと、導入後に迷うことなくスムーズに運用できます。
初めて顧客管理ツールを導入する場合やパソコンの対応に詳しい従業員がいない場合など、導入時に不安があるときは、サポート体制が手厚いツールを選ぶこともひとつの手です。
まとめ
近年、自動車整備業界では、若者の自動車離れなど自動車ユーザーの減少にともない、顧客獲得がひとつの課題となっています。
中小の自動車整備会社では、自動車整備士が顧客獲得やフォロー対応をしなければいけない状況になっています。従業員の負担を減らすためには、業務の効率化が欠かせません。MAやSFA、CRMなどの顧客管理ツールを利用することで、顧客の獲得や次回入庫のフォローの業務にかける工数の削減につながります。
しかし顧客管理ツールはこの記事で紹介したもの以外にもさまざまあり、どのツールを選べばいいのか迷うものです。顧客管理ツールの選定や、導入したツールの設定や使い方にお悩みの方は、自動車整備事業の再開発をおこなうビズピットでサポートが可能です。
初回ご相談は無料ですので、是非お気軽にご連絡ください。

【引用】
※1 山口日産自動車株式会社
https://www.mlit.go.jp/common/001058685.pdf
※2 クラウドサーカス株式会社「BowNow」
https://bow-now.jp/
※3 HubSpot Japan株式会社「Sales Hub」
https://www.hubspot.jp/products/sales
※4 ゾーホージャパン株式会社「Zoho CRM」
https://www.zoho.com/jp/crm/