車両整備業者が受けるべき「認証」とは?|特定整備認証やテュフ認証についても解説

車両整備業界に存在する「認証制度」として、2021年現在「事業場に対する国からの認証制度」「テュフ認証」などが存在します。今回の記事では、車両整備事業者のために現行の認証制度について整理し解説します。

さらに、今後整備業界でどのようなお墨付きが求められる可能性があるのかについて、様々な事例を元に予測します。車両整備事業者の皆さまは、ぜひ参考にしてください。


【目次】
1 車両整備業界で実施されている認証制度
 1-1 車両整備事業に必要な「事業場への認証」
 1-2 2020年4月からは「特定整備」にも認証が必要に
2 これからの整備工場においての“お墨付き”となる「テュフ認証」
3 他業界からヒントを得る!特徴的な「お墨付き」の事例
 3-1 製品安全協会の「SGマーク制度」
 3-2 企業が社内外でセキュリティ対策を行っていることを示す「ISMS認証」
 3-3 アパレル業界の「純国産製品」へのお墨付の認証
4 まとめ

車両整備業界で実施されている認証制度

車両整備業界では、すでに整備工場への認証制度や特定整備の実施に対する許認可の制度があります。現状を整理するためにも、2021年7月現在で車両整備事業者の皆さまと関係のある認証制度について、解説していきます。

車両整備事業に必要な「事業場への認証」

自動車整備工場への認証制度には、国土交通省によって定められた「認証工場」「指定工場」の2種類があります(※1)。 認証工場とは、地方運輸局長の認証を受けた工場が名乗ることができ、車の点検整備といった基本的な車両整備業務を行えますが、車検は車検場で行わなければなりません。一方で、指定工場は一定の基準を満たした整備工場が申請を行い、基準をクリアしていれば指定を受けることができます。

2020年4月からは「特定整備」にも認証が必要に

2020年4月から、ASV車の整備で必要な「特定整備(エーミング)」も追加取得による認証を受ける必要があります(※2)。 特定整備は、ASV車などに搭載されている「電子制御装置に影響を与えうる作業全て」が対象となり、専用の設備・ツールが必要です。

今後、ASV車が占めるシェアはますます増加すると予想されますので、特定整備の認証取得に向け準備をしておきましょう。

特定整備の車両整備業界への影響とは【エーミング必須の時代】

これからの整備工場においてお墨付きとなる「テュフ認証」

テュフ認証は、ドイツに本社を置くテュフ ラインランドが実施している認証制度です。日本ではテュフ ラインランド ジャパン株式会社が認証を担当し、同社が定めた基準をクリアした整備工場に対して認証が与えられます。テュフ認証は車両整備工場以外にも付与され、医療やIT、金融、小売などのあらゆる領域でサービスの質に対する認証を行っています。

テュフ認証は、レストラン業界のミシュランのようなもので、「ゴールド認証」「プラチナ認証」の二つのグレードが存在します。テュフ認証は200項目からなる厳しい審査基準が設けられていますが、前述のエーミング作業のように車両整備業務が複雑化するに従って、認証取得の難易度はさらに上昇するかもしれません。

しかし、テュフ認証を取得している=第三者に認められた車両整備を行える整備工場であると、ユーザーにアピールするチャンスでもあります。

他業界からヒントを得る!特徴的な「お墨付き」の事例

お墨付き

ここから、他業界で実施されている特徴的なお墨付きの事例について紹介します。

製品安全協会の「SGマーク制度」

福祉用具や家具などの消費生活用商品に対し与えられるお墨付きとして、製品安全保障協会の「SGマーク認証」があります(※3)。 SGとは「Safe Goods(安全な製品)」の略で、同協会が分類した製品に対し認証マークが与えられます。
SGマークの特徴的な点として、安全基準・製品認証・事故賠償がワンパッケージになっていることが挙げられます。安全基準に関しては独自の「SG基準」を設け品質の管理を行っており、認証を受けた製品にマークを付与するだけでなく、SGマーク付き製品の欠陥が原因で発生した人身事故に対しては賠償処置まで行われます。

今後、車両整備業界でも、SGマークのように複数の要素が組み合わさった認証制度が生み出される可能性があり、既に整備・点検促進のために日整連が考案した「てんけんくん」が存在しています。しかし、今後はSGマークのように車両のオーナーに整備業務の質が高いことをアピールし、安心感を感じてもらうことを目的としたお墨付きも生まれる可能性があるのではないでしょうか。

例えば、お墨付き制度を発行する企業側が基準をクリアした整備工場に対し、従来の認証制度に加えてユーザーと整備業者間でトラブルが発生した際に認証を与えた会社が間に立つといったビジネスモデルの制度などです。

さらに、事業者とユーザー間のトラブルを補償する場合、保険会社とも連携を取るとより効果的と考えられます。

自動運転社会における保険商品と整備事業者への影響

企業が社内外でセキュリティ対策を行っていることを示す「ISMS認証」

ISIM認証とは、財団法人「日本情報処理開発協会(JIPDEC)」が定めた、企業の情報マネジメントシステムを評価するための制度です(※4)。 ISIM認証は「情報セキュリティマネジメントシステム」とも呼ばれる国際規格のひとつで、企業でPCやスマートフォンなどの情報端末を扱うシーンが増えたことに伴い、重要視されるようになったセキュリティ対策強度を判断する指標となります。

ISIM認証では、審査対象の企業が実施している情報セキュリティレベルを認定するため、第三者機関が「ISMS適合性評価制度」で定められた基準に基づいて審査を行います。

車両整備業界でも車検証のICカード化など、電子情報を取り扱うケースも増えつつあります。車両整備事業者が扱う情報セキュリティがより高度なものになっていけば、今後車両整備業界でもこうした「ISIM認証」のような、事業者の情報セキュリティレベルを補償することに対する重要性が高まるかも知れません。

情報セキュリティの扱いに関しては、情報処理推進機構のホームページに詳しく記載されています。

情報セキュリティ基本方針を制定しました
 

アパレル業界の「純国産製品」へのお墨付の認証

アパレル業界では、販売力回復のために2015年から織りや編み、染色などの工程を手がけた製品に「純国産」のお墨付きを与える取り組みを行っており、経済産業省も「クールジャパン」の一環で海外展開のサポートを行っています(※5)。 アパレル業界で純国産のお墨付きを導入した背景には偽ブランドの増加があり、ブランド保護の観点から商品を区別できるようにするために純国産のお墨付きが誕生しました。

ユーザー視点で見ても、純国産のお墨付きがあることにより市場に出回っている偽ブランド商品と純正のブランド品の区別がしやすくなるメリットがあると言えます。

経産省は「質の高いインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業委託費(我が国によるインフラの海外展開促進調査)」(※6)などの取り組みを行っており、将来的には日本のインフラ技術の海外展開も検討されていると伺えます。日本の車両整備事業者にも本格的な海外展開のチャンスが訪れれば、「純日本」のお墨付きを施したブランディングが行われるかも知れません。

まとめ

車両整備事業者としても、認証制度を積極的に活用することで、工賃に関する理解が深まり、工賃の向上やユーザー増に繋がるかも知れません。

他業界の事例も参考にすると、お墨付きや認証制度は「よりユーザーに安心感を与えるためにはどうすればいいか?」との着眼点のもと誕生していると分析できます。そのため、整備店としても、整備業務の質を可視化するなど、ユーザーがより安心できるようなアプローチを独自に行うのも売上拡大のためには有効な手段でしょう。

ビズピット株式会社は、大阪・兵庫を中心に車両販売・整備事業の再開発を支援します。他業界の事例も踏まえ、今後の車両販売店や整備工場の付加価値向上に必要な施策を一緒に考えさせていただきますので、ぜひお問合せください。



【引用】
※1
・自動車整備工場には認証工場と指定工場があります。その違いは?(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/ninshoutoshiteinochigai.html

※2
・道路交通法の一部を改正する法律案要綱(国土交通省)
https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/310308/01_youkou.pdf

※3
・SGマーク制度について(一般財団法人​製品安全協会)
https://www.sg-mark.org/aboutsgmark

※4
・ISMS認証(ISO27001)とは(NEC)
https://jpn.nec.com/security/isms/isms.html

※5
アパレル業界、純国産にお墨付き 販売回復へ経産省支援(琉球新聞)
https://docs.google.com/document/d/1Nfk89zSPwHc_Kq-qLHU923OTM8HChiQNgSkJZ9XjhLU/edit#

※6
令和3年度「質の高いインフラ及びエネルギーインフラの海外展開に向けた事業実施可能性調査事業(委託費、補助金)」 二次公募の事前周知について
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/cooperation/oda/r3_yosan_2_2_2.html

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