次世代の交通システムMaaSにおける車両整備事業者のビジネスチャンスとは?

maasのイメージ
新たなモビリティ・サービスであるMaaSは、次世代の交通システムとして今後の日本での普及が期待されています。本稿では、MaaSの概要や社会にもたらすメリットについて整理し、車両整備事業者の皆さまにとってどのようなビジネスチャンスがあるのか論じていきます。


【目次】
1 MaaSとは?
2 MaaSの5段階の認証システム
 2-1 都市部と地方における新たなインフラ
 2-2 公共交通機関の整理
 2-3 一般ユーザーの利便性の向上
3 MaaSが社会にもたらすメリット
4 車両整備事業者にとってMaaSではどのようなビジネスチャンスがあるのか?
5 まとめ

MaaSとは?

MaaS(Mobility as a Service)とはフィンランド発祥のシステムで、次世代のモビリティサービスです。ユーザースマートフォンやPCなどのデジタルデバイスを使用し、バスやタクシーなどを含む複数の移動手段の予約・決済が一括で可能になります。

鉄道やバス、タクシー、飛行機など身の回りにある移動手段を統合し、ひとつのサービスとして提供することで、ユーザー側の利便性は大幅に向上します。それにより、さらに効率的な移動が可能となります。

MaaSでは、ドライバー不足を補うために自動運転や電気自動車(EV車)の採用に加え、各種サービスをより効率的かつシームレスに運用するためのデータ分析・および改善が構想されています。

そのため、現在構想されているMaaSの実現には、自動運転やEV車の普及に加え、データプラットフォームやデジタルインフラの整備が必須となります。

MaaSの5段階の認証システム

MaaSでは、各種モビリティサービスの統合具合や実装されているシステムの機能に応じて、普及状況が5段階に分けられています。

レベル0…統合なし。情報やシステムは移動サービスごとに個別適用。
レベル1…情報のみ統合されている。予約・支払いシステムについては未統合。
レベル2…単一のシステムで各種移動サービスの予約・支払いまで行える。
レベル3…複数のモビリティサービスを統合された料金体系・システムで利用可能。
レベル4…レベル3のMaaSを都市計画レベルで使用できる。

ソフトバンクニュースの発表(※1)によると、2021年現在の日本では上記のうちレベル1までしか普及していません。しかし、レベル2以上のMaaSも欧州を中心として広がっており、MaaS先進国のフィンランドでは月額固定料金で各種モビリティサービスを利用できる、世界初のMaaS「Whim(※2)」が提供されています。日本においても、レベル2〜3普及にはそこまでの時間はかからないでしょう。

MaaSが社会にもたらすメリット



MaaSの普及によって期待される社会的なメリットとして「都市部と地方における新たなインフラ」「公共交通機関の整理」「一般ユーザーの利便性の向上」などが挙げられます。

都市部と地方における新たなインフラ

MaaSは持続可能性を持った都市部・地方の両方において、新たな交通インフラとしての役割が期待されます。予約から決済まで包括的かつワンストップに利用できるモビリティサービスが普及すれば、効率的な移動が可能になり、特に都市部で発生しがちな渋滞の緩和に繋がるでしょう。

過疎化が問題となっている地方エリアでは、年々減りつつある路線バスや電車などの代替となります。MaaSではEV車が使用され、普及すれば自家用車の数も減っていくと予想されます。それにより、温室効果ガスの排出が減り、環境へ与える悪影響の削減も期待できるでしょう。

公共交通機関の整理

MaaSが普及し「稼働率が上昇する(=収入増)→ドライバー負担が下がる(=人件費削減)」の流れができれば、公共交通機関の収入増加が図れます。例えば、鉄道の路線数は国土交通省の「過疎地域における地域公共交通の現状と課題(※3)」によると「2000年度から2015年度までの間に37路線が廃止され、2016年度の赤字率は74%」とのことですので、MaaSによって受ける恩恵は多大なものでしょう。

また、全ての地域で同じようなモビリティサービスを提供するのではなく、包括的なサービスである利点を活かして、エリア特性に応じた柔軟な交通インフラの構築も可能です。「観光地域ではオンデマンドバス」「街中ではバスやタクシー、電車に加えキックスターターなども採用する」など、モビリティの特性に応じて適切な移動手段を採用すれば、利便性はさらに向上します。

一般ユーザーの利便性の向上

MaaSの普及で移動手段の確保がスムーズになり、予約から決済までワンストップで行えるようになれば、バスから電車などへの乗り換え時間を計算したり、それぞれ別のプラットフォームで決済をしたりといった煩雑さからも開放されます。

さらに、自家用車の購入・維持をする必要がなくなれば、その費用からMaaS利用費を差し引いた費用を削減できます。例えば、前述したフィンランドの「Whim」は毎月49ユーロ(約6,300円)から利用可能です。

従業員に通勤手当を支払っている企業でも、MaaSが普及すれば交通費の一律支給が容易になり、経費の精算がスリム化できるでしょう。

車両整備事業者にとってMaaSではどのようなビジネスチャンスがあるのか?

MaaSが普及すれば、車両整備事業者にとってはMaaSで使われる車両の点検予防整備をする機会が、一般車両に比べて多くなる可能性があります。稼働率を考えると、オーナーカーの場合、平日に1時間、土日にそれぞれ2時間使用した場合、稼働率は5.4%程度となります。一方、MaaS車両は1日18時間使用されると想定した場合、75%程度に達します。使用率の高さから、メンテナンスの必要性も高まり、車両整備事業者のニーズも高まるでしょう。

さらに、MaaSのバリューは各モビリティサービスをワンストップで利用できる点にあり、サービスの流れを止めないことが重要視されると考えられます。そのため、運用車両の非稼働時におけるチェックメンテナンスの必要性も増すのではないでしょうか。

国土交通省の「MaaS 関連データの連携に関するガイドライン(※4)」は、MaaS関連サービスとして不動産や保険、観光なども含めた新サービスの早出が期待されています。MaaSの普及に当たっては業界間、官民一体となった連携が必要になると予想されますので、整備店としても業界間を跨いだ横断的なビジネス展開が可能です。

例えば「保険会社と連携しMaaSに係る損害賠償保険の中で、保険会社との連携を深める」「観光地で、地元の観光企業とタイアップして地元産業と一緒にMaaS車両の充電施設を併設する」などです。
 
自動運転社会における保険商品と整備事業者への影響

まとめ

MaaSが普及すれば利便性が非常に向上すると予想されますが、現状は普及レベル5段階の内、日本でもやっとレベル2が見えてきた段階です。しかし、少子高齢化の日本においては、都心部は元より「地方の過疎化地域などにおける高齢者の移動手段確保」の観点から、早急な普及が期待されるライフラインのようなサービスと言えます。

MaaS普及にあたっては官民・業界間を跨いだ連携が必要になると考えられます。そのため、車両整備事業者としては、今後に備えて他業種と協業のための関係構築・情報共有を行い、準備をしておくことが求められるでしょう。

大阪・兵庫を中心に車両販売・整備事業の再開発を行うビズピット株式会社としても、車両整備事業者のIT業界をはじめとする他業種との協業経験も活かし、車両整備事業者さまと一緒に事業を再開発させていただきます。




【引用】
※1
・ソフトバンクニュース
https://www.softbank.jp/sbnews/entry/20210319_01?page=02#page-02

※2
・Whim
https://whimapp.com/jp/package/coming-to-japan/

※3
・国土交通省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000569916.pdf

※4
・国土交通省
MaaS関連データの連携に関するガイドラインver2

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