【自動車整備工場の事業相続】後継者がスムーズに引き継ぐ8つのポイント

自動車整備工場の事業承継は、単なる会社の移譲ではなく、長年培ってきた技術や顧客との信頼関係を次の世代へとつないでいく、重要なミッションです。しかし、後継者がスムーズに事業を引き継ぐためには、さまざまな課題や準備が必要になります。

本記事では、特に家族が先代から相続するようなケースを想定し、後継者が知っておくべき8つのポイントを解説します。

法的トラブルを防ぎながら事業の継続性と競争力を確保するために押さえておくべき重要事項を一つずつ確認し、あなたの整備工場の未来を築いていきましょう。

目次

親族関係の確認

まず最初のステップとして、親族関係の確認と遺言書の確認を実施しましょう。

親族関係の確認

事業承継は、会社の所有権や経営権の移転を伴うため、法定相続人である親族を正確に把握することが不可欠です。相続人が不明なまま手続きを進めると、後々、相続に関するトラブルに発展する可能性があるからです。

以下の通り、親族関係をあらためて正確に把握しましょう。

①相続人の範囲を確認する
相続人の範囲を確認し、関与する人々を特定します。誰が相続に関与するのかを明確にすることが重要です。

②親族関係図を作成する
親族の関係を視覚化するために、親族関係図を作成します。これにより、誰がどの位置にいるのかを一目で理解できます。

③各相続人の順位を確認する
相続の優先順位を把握します。相続の優先順位を理解することで、誰がどの財産をどのように相続するのかが明確になります。

作成した親族関係図は、相続人が確認するだけでなく、親族内で共有することで誤解や紛争を防ぐことにつながるとともに、相続税の計算や役所の手続きの際にも役立ちます。相続手続きを進める際には、親族関係図を作成しておくことをお勧めします。

遺言書の有無を確認

事業承継において、遺言書の有無とその内容を確認することは、極めて重要なことです。
通常、遺言書には被相続人の意思が明確に示されているため、遺産分割協議が不要となり、相続手続きが迅速に進むことや、相続人間での争いを防ぎ、円滑な事業承継につながるからです。

遺言書の存在を確認したら、記載されている内容をしっかりと把握しましょう。遺言書には、相続に関する具体的な指示が記載されています。
また、公正証書遺言がある場合は、公証人役場でその内容を確認し、自筆証書遺言がある場合は、家庭裁判所で検認手続きを行うことにより、遺言書の有効性が確認されます。
遺言書の内容が不明確な場合や、解釈に困難が生じた場合には、弁護士や司法書士に相談しましょう。

もし遺言書が存在しない場合は、法定相続に基づいて分割協議を進める必要があり、法定相続では、民法に定められた相続人の範囲と相続分に従って財産が分割されます。この場合、相続人全員の合意が必要となり、状況によっては協議が長引くこともありますので、早めに対処しましょう。

財産内容の明確化

事業承継時には財産内容を正確に把握することが重要です。
財産内容を明確にすることで、相続税額の正確な算出、円滑な資産移転、従業員や取引先への説明責任を果たすなど、さまざまなメリットがあります。特に、相続税対策や事業の評価において、不透明なまま事業承継を進めると、後々トラブルに発展する可能性も高まりますので正確に把握しましょう。

ここでは、以下のケースを想定し解説していきます。

  • 不動産を所有している場合
  • 所得税の確定申告をしている場合
  • 非上場株式を所有している場合
  • 生命保険に加入している場合
  • 3年以内に贈与がある場合
  • その他資産を所有している場合

不動産を所有されている場合

被相続人や企業が持つ不動産について、以下のとおり把握しましょう。

①住宅の所在地を明確にする
所有する不動産のリストを作成し、土地と建物それぞれの詳細情報を確認します。固定資産税の課税明細書を準備し、詳細な情報を把握します。

②不動産登記簿を確認する
名義や権利関係を明確にするために、不動産登記簿を確認します。これにより、法的な所有権や権利関係が明確になります。

③不動産の評価額を算出する
専門家に依頼して正確な評価額を算出します。これにより、相続税の計算や分割の際に公平な判断が可能になります。

不動産の評価は、相続税申告においても重要な要素です。専門家の助言を得て、正確かつ適切な評価を行いましょう。

所得税の確定申告をされている場合

所得税の確定申告状況を確認することは、事業の評価や税務上のリスクを把握し、円滑な承継を進めるために不可欠です。過去の申告内容から、事業の収益性や経費の状況、税務上の問題点などを把握することで、適切な税務計画を立て、相続税対策や事業継続のための資金計画に役立てることができます。

確定申告状況は以下の通り確認しましょう。

①直近の確定申告書の確認
直近の確定申告書から、申告内容に不明点、誤りや漏れがないかを慎重に確認します。

②未納税額や還付金の有無を確認
次に、未納税額や還付金の有無を確認し、税務署からの通知や指摘事項がないかを確認します。これにより、税務面でのリスクを早期に把握し、適切な対応を取ることができます。

③税務署からの指摘事項を確認
税務署からの指摘や未処理の項目がある場合、それを放置すると後々の手続きに支障をきたす可能性があるため、速やかに対処することが重要です。

④税理士に相談
税務面での不安や疑問がある場合には、税理士などの専門家に相談して、適切な税務処理を行います。

⑤法律や規制の変更に対応
相続に伴う所得税の確定申告は、法律や規制の変更に敏感に対応する必要があります。そのため、税理士などの専門家による定期的な税務相談や最新の税法情報の確認が重要です。

税務リスクを最小限に抑え、スムーズな相続を実現するためには、確定申告状況の確認が不可欠です。

非上場株式を所有されている場合

相続しようとする企業に非上場株式がある場合、正確な価値の把握と権利関係の整理を行いましょう。

非上場株式は以下の通り確認しましょう。

①関係書類の準備
直近の決算書、税務申告書、勘定内訳書などの添付書類一式を準備します。これらの書類は、事業の財務状況や経営実績を把握するために不可欠です。

②非上場株式の確認
所有する非上場株式を確認するとともに、株主名簿から権利関係や持株比率を明確にします。これにより、各株主の権利や義務を正確に把握し、一覧表などを作成しましょう。

また、株式の評価額を専門家に依頼して算出し、正確な価値を把握することも検討しましょう。

③株式譲渡制限と取締役会の承認要件確認
株式譲渡制限や取締役会の承認要件を確認し、株式の移転に際して必要な手続きを把握します。相続を機に、株式の譲渡など整理することを検討しましょう。

④専門家の助言を受ける
必要に応じて弁護士や税理士に相談し、法的・税務的なアドバイスを受けます。

例えば、税理士に依頼して株式の評価額を算出することで、相続税の負担を正確に把握できます。また、弁護士に相談することで、株式譲渡に関する法的手続きを円滑に進めることができます。

非上場株式に関するトラブルを未然に防ぐためには、これらの確認作業が不可欠です。

トラブルの事例として、相続手続き中に非上場株式の正確な評価額が不明確なまま相続が進行した場合、後に株式の価値が大幅に変動し、相続人間で評価額を巡る紛争が発生することがあります。このようなトラブルは、株式の正確な評価を行わなかったために生じる典型的な例であり、事前の適切な対応が不可欠です。

また、株式の評価は、相続税の計算や分割協議を進める際の基礎資料です。上記のように慎重な対応が求められます。

生命保険に加入されている場合

自動車整備事業を相続する際、生命保険の確認も重要なポイントです。
先代の生命保険の契約内容を詳細に確認し、適切な対応を取ることで、相続手続きをスムーズに進めることができます。

生命保険は相続財産の一部として重要な役割を果たすため、正確な情報収集と計画的な手続きを行いましょう。

生命保険は以下のとおり確認しましょう。

①生命保険の契約内容を確認
被相続人が加入している生命保険の契約内容を詳しく確認します。保険証券や契約書を手元に準備し、保険料の支払い状況も確認します。

②受取人や保険金額の把握
生命保険の受取人や保険金額を確認します。保険契約書や保険証券の保管場所を確認し、受け取りに関する詳細を把握します。

③解約返戻金や受け取り手続きの確認
解約返戻金や保険金の受け取り手続きについて確認します。必要な手続きや申請書類を準備し、計画的に進めます。

④保険会社や保険代理店に連絡
保険会社や保険代理店に連絡し、必要な書類や手続きの詳細を素早く把握し、遅滞なくスムーズに保険金を受け取れるように手続きしましょう。

生命保険の契約内容や手続きを詳細に確認し、適切な対応を取ることで、相続手続きがスムーズに進みます。また、相続人にとっても大きな安心感が得られます。

3年以内に贈与がある場合

自動車整備事業を相続する際、過去3年以内に贈与があったかどうかの確認は非常に重要です。

なぜなら、相続税法では、被相続人が亡くなる前の3年間に行われた贈与は相続税の課税対象になる可能性があるからです。このため、過去3年以内の贈与に関する情報を正確に把握し、相続税の計算に反映させることが重要です。

贈与について以下の通り確認しましょう。

①贈与の詳細を確認
相続人の氏名、贈与の年月日、続柄、贈与額を詳細に確認します。これにより、相続税の計算に必要な情報を正確に把握できます。

②相続税の計算に反映
贈与が相続税の課税対象となる場合があるため、これらの情報をもとに相続税の負担を正確に計算します。

③適切な対応を取る
贈与の内容や金額が相続税にどのように影響するかを理解し、必要に応じて適切な対応を取ります。これには、相続税の申告や支払いに必要な手続きを含みます。

④税理士に相談
過去3年以内に贈与があった場合、その詳細を正確に確認し、相続税に適切に対応することが重要です。

税理士の助言を受けることで、贈与が相続税に与える影響を最小限に抑え、相続手続きを円滑に進めることができます。正確な情報の把握と専門家の助言を得ることで、スムーズな相続を実現しましょう。

その他資産を所有されている場合

資産の全体像を把握することで、相続財産の正確な評価と適切な分配が行えます。

その他資産は以下の通り確認しましょう。

①資産のリストを作成
ゴルフ会員権、現預金、動産、有価証券、借入金など、所有する資産のリストを作成します。
併せて、保管場所や口座情報も確認しましょう。

②資産の収益状況をチェック
資産について、最新の収益状況を把握します。これにより、資産の価値を正確に把握し、適切な管理が行えます。

③資産管理の専門家に相談
必要に応じてファイナンシャルプランナーや税理士に相談し、最適な管理方法などを検討しましょう。資産の分散や投資戦略の見直しなど、具体的なアドバイスを受けることで、資産運用の効率性を高めることが可能です。

例えば、税理士に相談することで、相続税の最適化や節税対策を講じることができます。ファイナンシャルプランナーに依頼して、資産の分散や投資戦略の見直しを行い、資産運用の効率性を高めることも可能です。

その他の資産についても正確に確認し、適切な管理と相続手続きを行うことで、相続財産の評価と分配がスムーズに進みます。また、資産管理の専門家の助言を受けることで、税務上のリスクを軽減し、資産の有効活用を図ることも検討しましょう。

企業価値の算定

事業承継において、企業価値を正確に算定することは、相続税額の算出、後継者への円滑な事業移譲、事業の将来的な発展のために不可欠です。企業価値を把握することで、適切な評価額に基づいた株式の譲渡や、税務対策を講じることができます。

企業価値の算定の手順は以下のとおりです。

①財務諸表や経営実績の分析
事業の現状を正確に把握するため、財務諸表や経営実績を詳細に分析します。これには、売上高、利益率、資産負債のバランスなどが含まれます。これらのデータを通じて、事業の健全性や収益性を理解し、現状の正確な評価が可能です。

②将来の収益予測や市場環境の評価
将来の収益予測や市場環境を考慮し、事業の成長性やリスクを評価します。市場の動向や競合他社の状況を踏まえた収益予測を行うことで、企業の純資産価値や収益力を反映した適正な評価ができます。これにより、将来の見通しを基にした戦略的な意思決定が可能です。

③専門家に算定を依頼
必要に応じて、公認会計士や事業評価士などの専門家に依頼し、客観的かつ信頼性の高い企業価値評価を行うことも検討しましょう。専門家の評価を通じて、バイアスのない公平な評価を得ることができ、相続や事業承継における重要な判断材料にすることができます。

正確な企業価値の算定を基に、適切な相続対策や経営戦略を立案し、事業の持続的な発展を目指しましょう。

従業員とのコミュニケーション

自動車整備事業を相続する際、従業員との良好な関係を保つことは重要なミッションです。従業員の理解と協力を得ることで、事業相続が円滑に進むだけでなく、今後の事業運営にも大きく影響するからです。

そのためには、今後のビジョンを明確に伝え、安心感を持ってもらい、信頼関係を築くことが重要です。

従業員とよい関係性を作る方法については、以下を参考にしてください。

①事業承継の意図やビジョンを明確に伝える
従業員に事業承継の意図やビジョンをしっかりと伝えます。これにより、従業員は新しい経営体制に対する安心感を持ち、積極的に協力する意欲が高まります。

②役職や担当業務の変更を丁寧に説明する
承継に伴う役職や担当業務の変更については丁寧に説明し、スムーズな移行を図ります。変更点やその理由を理解してもらうことで、混乱を防ぎます。

③引き継ぎ事項や重要なノウハウを共有する
先代からの引き継ぎ事項や重要なノウハウを共有し、業務の継続性を保ちます。これにより、事業運営に必要な知識やスキルが途切れることなく引き継がれます。

④従業員の不安や疑問に積極的に応える
従業員の不安や疑問に対しては積極的に応え、信頼関係を築きます。オープンなコミュニケーションを心がけ、従業員が安心して意見を述べられる環境を作ります。

従業員との良好なコミュニケーションを通じて、事業相続を円滑に進めることができます。従業員の協力と信頼を得ることで、持続可能な事業運営を実現し、企業の発展につなげることが可能となるでしょう。

認証/指定要件の確認

自動車整備事業を相続する際、認証や指定要件の確認は非常に重要です。
先代が亡くなったことで、認証や指定の要件を満たさなくなることがあり、そのまま事業を続けると、法令違反となり、大きなペナルティを受ける可能性があるからです。

まずは会社の組織図などで、先代の役割を確認し、必要に応じて変更手続きを実施しなければなりません。

自動車整備事業に関わる法令は複雑で多岐にわたるため、関係行政に確認を取るか、自動車整備振興会などの専門家に相談することをおすすめします。

先進技術への対応

自動車整備事業を相続する際、先進技術への対応は競争力を維持・向上させるために重要です。

相続を機に、これまで対応できていなかった先進技術に対応することで、顧客に対して、先代から業務を引き継いだことによるメリットをアピールできます。

顧客の維持

自動車整備事業を相続する際、顧客の維持は事業の安定と発展に不可欠です。顧客とよい関係性を維持することができれば、事業の安定や発展にもつながっていきます。

具体的には、先代をひいきにしていただいていた顧客が離れないよう、丁寧にコミュニケーションを取ることや、事業承継の挨拶状などを顧客に送付し、新体制の紹介や先代がお世話になったことに対するお礼などを行いましょう。

これにより、事業承継に関わる顧客の不安を払拭させるとともに、新たな経営体制に対する信頼感がうまれます。

相続税の節税

相続税の節税には早めの対策が必要です。相続税の節税には専門的な知識が求められ、自動車整備事業の相続には、その事業に精通した専門家の力が必要です。

相続税の節税を成功させるためには、早期に専門家のアドバイスを受け、適切な対策を講じながら、余分な相続税を支払わないようにする必要があります。
なお、ビズピット株式会社は、自動車整備事業の専門家を有していますので、相続でお悩みの際は、ぜひビズピットまでご相談ください。

まとめ

自動車整備工場の事業承継は、単なる会社の移譲ではなく、長年培ってきた技術や顧客との信頼関係を次の世代へとつないでいく重要なミッションです。本記事では、後継者がスムーズに事業を引き継ぐために押さえておくべき8つのポイントを解説しました。親族関係の確認、財産内容の明確化、企業価値の算定など、事業承継を成功させるための重要なステップを網羅的に解説しています。この記事を参考に、ご自身の事業承継の準備を進め、円滑な事業承継を実現しましょう。

もし、自動車整備工場の相続にお悩みの方は、ぜひ一度ビズピット株式会社へお問い合わせください。私たちがあなたの整備工場の円滑な相続手続きのお手伝いをします。

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