自動車整備事業者に最適な資金調達方法は?

整備工場の建て替えなどを検討する際に、資金調達の方法で悩む自動車整備事業者は少なくありません。資金調達の方法にはさまざまな方法があり、どの方法が最適なのかを見極めるのは容易ではないためです。

この記事では整備工場建て替えなどに必要な資金の調達方法について詳しく解説していきます。今回は、デットファイナンス、エクイティファイナンス、不動産証券化の3つを中心に紹介します。整備工場の建て替えを検討している自動車整備事業者の方は、この記事を参考にしてみてください。

【目次】
1 自動車整備事業者に向けた資金調達①デットファイナンス
 1-1 銀行からの融資
 1-2 日本政策金融公庫からの融資
 1-3 制度融資
 1-4 ビジネスローン
 1-5 少人数私募債
2 自動車整備事業者に向けた資金調達②エクイティファイナンス
 2-1 公募増資
 2-2 株主割当増資
 2-3 第三者割当増資
 2-4 エンジェル投資家
 2-5 ベンチャーキャピタル
3 自動車整備事業者に向けた資金調達③不動産証券化
 3-1 GK-TKスキーム
 3-2 不動産証券化による資金調達のメリット
 3-3 不動産証券化による資金調達のデメリット
4 整備工場建て替えのための資金調達のポイント
5 まとめ

自動車整備事業者に向けた資金調達①デットファイナンス

資金
デットファイナンスとは銀行からの融資などのように、資金を借り入れて調達する方法です。デットとは「負債」という意味で、デットファイナンスによって調達した資金はいずれ返済しなければなりません。

デットファイナンスは他の資金調達の方法と比較して調達先が豊富であるため、比較的資金が得やすい方法です。

ただし、利息をつけて返済する必要があるため、将来的なキャッシュフローが減少しやすいというデメリットがあることも知っておくようにしてください。

資金の調達先をいくつか紹介します。

銀行からの融資

調達先の代表的なものに、「都市銀行・地方銀行」などの民間金融機関が実施している融資が挙げられます。民間金融機関からの融資は、おもに金融機関から直接融資を受ける「プロパー融資」と、信用保証協会から保証を受ける「保証付き融資」の2種類があります。それぞれ解説していきましょう。

・プロパー融資
事業者が直接銀行から融資を受ける方法です。信用保証協会を利用しないため保証料がかからず、借入金額の上限もないというメリットがあります。その反面、融資に関する審査が厳しく、融資を受けられる企業が限られるのがデメリットです。

なお、返済期間が短くなる傾向があるため、短期間で返済できる金額を見極めなければならないことも覚えておきましょう。

・保証付き融資
信用保証協会が企業の保証人となったうえで融資をうける方法です。

企業は借入金額に応じて信用保証料を支払う必要があるものの、返済が困難になった際は信用保証協会が代位弁済してくれます。

金融機関にとっては、融資した企業が返済できなくなっても信用保証協会が返済してくれるため、リスクが少なくなります。そのため、プロパー融資よりも審査は通りやすくなります。

ただしデメリットとして、金利がプロパー融資と比べて高くなる傾向にあること、利子のほかに保証料も支払わなければいけないことが挙げられます。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫は、国が100%出資している政府系の金融機関です。日本政策金融公庫では、中小企業や小規模事業者、新たに起業・開業する方など、融資を受ける人にあわせたさまざまな制度を用意しています。これらは低金利なものが多く、起業したばかりで財務状況が心もとない事業者の方でも利用できるのが特徴です。

とはいえ、融資審査には面談が必要なうえに審査項目も多いため、審査に時間がかかることを理解しておきましょう。

制度融資

「地方自治体・民間金融機関・信用保証協会」の3つの機関が連携して行う融資のことです。

以下のようなメリットがあります。

・金利が低い
・長期間の借入れが可能
・審査のハードルが低いので、起業したばかりの自動車整備工場も利用しやすい

ただし、デメリットもあるので注意が必要です。

・融資額に上限が設定されている
・自治体ごとに利用条件が違う
・手続きに時間がかかる

上記のデメリットを頭に入れて、制度融資を検討してみましょう。

ビジネスローン

「銀行・信販会社・消費者金融」などが提供する、事業資金に特化している融資です。

担保や保証人がなくても利用でき、融資審査も厳しくありません。ただし、金利が高く借入限度額が低いなどのデメリットがあることも理解しておきましょう。

少人数私募債

社債を発行して50人未満の投資家から資金を借り入れる方法です。少人数私募債の場合は、機関投資家ではない知人や親族に依頼することが多くなっています。

少人数私募債の発行には保証人や担保が不要で、発行者が「償還期限・償還方法・利率」を決定できるというメリットがあります。このため、保証人や担保が用意できない自動車整備工場におすすめの資金調達の方法です。

ただし、財政状況によっては少人数私募債を発行できない可能性があり、元本の一括償還が必要になるかもしれないことは理解しておきましょう。

自動車整備事業者に向けた資金調達②エクイティファイナンス

エクイティファイナンスは、株式の交付と引き換えに出資を受けて資金調達する方法です。

デットファイナンスと異なり、原則として調達した資金の返済義務はありません。調達資金の返済義務がないことはメリットだと言えるでしょう。ただし、株式に対する出資者が増えた結果、会社の経営権を他者が持つ可能性があることは知っておきましょう。

株式の新規発行で出資する方法として、公募増資、株主割当増資、第三者割当増資などが挙げられます。

公募増資

一般の投資家を対象に、時価に近い価格の株を新しく発行することで資金調達をする方法です。

一般投資家から資金調達ができるので、株主を増やすことができ、多額の資金調達が期待できます。ただし、新規の株主が増えるため、配当金の支払いが増加することがデメリットです。

株主割当増資

既存の株主に、保有している株数に応じて新株を引き受ける権利を与える方法です。

市場で株主を募る公募増資と異なり、株主割当増資では株主の構成や持株比率は大きく変動しません。そのため、自動車整備事業者から見て株を持ってほしくない投資家の参入を防ぐことができます。

ただし、株主割当増資は株主側のメリットがそれほどありません。そのため、新株を引き受けてもらうためには株主の理解を得なければなりません。結果として、資金調達に時間がかかってしまう可能性があります。また、増資金額によっては税負担が増えることも理解しておきましょう。

第三者割当増資

株主割当増資と似ていますが、既存の株主以外にも新株を引き受ける権利を与える方法です。

企業と深い関係にある取引先や銀行などの第三者に株式を割り当てることができます。そのため、株主割当増資よりも資金が集めやすいのが特徴です。

ただし、新しい株主が増えるため自動車整備工場の経営に対する力関係が変わり、特定の株主が強い権限を持つ恐れがあります。また、時価より安い価格で株式を引き受けてもらう有利発行を行った場合、既存の株主から不満が出る可能性もあります。こうしたリスクも理解しておきましょう。

エクイティファイナンスで資金を提供してくれる投資家には、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどがいます。エクイティファイナンスを考えられている自動車整備工場さまはこれらの投資家とコンタクトをとることをご検討ください。

エンジェル投資家

起業家に対して出資する個人投資家のことで、起業家が事業を立ち上げる際に必要な資金をサポートします。

ベンチャーキャピタルは一般的に、未上場の企業に投資して株式を取得し、その企業が上場したときに株式を売却して差益を得ています。このため、ある程度成熟した企業では資金が調達できない可能性が高いです。

エンジェル投資家から資金を調達する方法のメリットは、以下の2つが挙げられます。

・短期間で資金が調達できる
・返済の猶予が他の方法よりも長い

デメリットとしては以下が考えられます。

・多額の出資が見込めない
・エンジェル投資家を見つけることが難しいため、資金調達に時間がかかる

上記のデメリットがあることも理解しておきましょう。

ベンチャーキャピタル

将来発展していく見込みのある企業をターゲットに、出資・経営支援を行う会社のことです。

ベンチャーキャピタルもエンジェル投資家と同じく、キャピタルゲインを狙って企業へ投資します。そのため事業の立ち上げの際に出資することが多いです。また、ベンチャーキャピタルは経営方針にも積極的に関わります。ベンチャーキャピタルの示す経営方針に従う必要があることもデメリットです。

ただし、企業の成長に直結する経営支援を受けられるメリットがあるとも言えます。上手く活用すれば事業が成長する可能性を高められます。

自動車整備事業者に向けた資金調達③不動産証券化

デットファイナンスやエクイティファイナンス以外に、不動産を利用することで資金調達をする方法もあります。不動産証券化とは不動産から得られる利益をもとに有価証券を発行し、投資を募ることです。出資者は、投資額に応じた不動産の運用益を得られる仕組みになっています。

ここでは、不動産証券化を利用した資金調達について解説します。

GK-TKスキーム

不動産証券化の代表的なスキームです。GK-TKスキームでは、まず出資を募りたい企業(オリジネーター)が、不動産の運用事業を行う特別目的会社(SPC)を設立します。このSPCが合同会社であれば、GKと呼ばれます。そして、出資者である匿名組合(TK)がSPCに出資します。SPCはその資金をもとに運用を行います。

SPCを設立する理由は、万が一オリジネーターが倒産した場合でも、投資家や債権者を保護するためです。SPCの事業をオリジネーターと切り離すことで、共倒れになることを防ぎます。これを倒産隔離と呼びます。

投資家にとって、GK-TKスキームはリスクが少ない仕組みです。そのため、オリジネーターは資金を集めやすくなります。ただし、不動産を運用した利益から、投資家に元金と分配金を支払うことが必要になります。

不動産証券化を利用した資金調達を検討しているなら、「GK-TKスキーム」を理解しておきましょう。

不動産証券化による資金調達のメリット

不動産証券化を利用した資金調達のメリットは以下のとおりです。

・オフバランス化により財務体質が改善できる
少額から投資できるので、投資家から資金が集まりやすい
・有価証券化するため流動性が高くなり、投資しやすい
・パススルー課税が活用できる

不動産証券化による資金調達のデメリット

不動産証券化の資金調達のデメリットは以下のとおりです。

・さまざまな手続きが必要となるため、手続きが複雑で時間と手間がかかる
・不動産証券化に関わる当事者が多く、コストがかかる
・元本と分配金を支払う必要がある

不動産証券化は手続きが複雑で時間がかかるため、すぐに資金調達が必要な方には向いていません。

整備工場建て替えのための資金調達のポイント

前提として、資金調達のためには、安定した経営が続いており今後も利益が見込めることが重要です。

経営が安定していないと、資金が調達できたとしても返済できずに倒産したり、株主から自社の経営方針とは異なる意見が出てきたりする可能性があります。自社の考えどおりに経営を続けるためにも、安定した利益を得られる状態にしておく必要があります。

自動車整備事業に応用できる経営の方法を、下記の記事で詳しく解説しています。参考にしてみてください。

自動車整備事業にも活かし得るホテル業界のビジネスモデルとは?

まとめ

自動車整備事業者に向けた資金調達にはさまざまな方法があり、それぞれ特徴が異なります。会社の状況に合わせて、最適な資金調達方法を選びましょう。

状況ごとに適した資金調達方法は以下の通りです。

・担保がある場合には銀行融資が向いている
・株式が発行できる場合は増資が向いている
・土地を資産として保有している場合は不動産証券化が向いている

このように、特徴の違いを理解しておくことで、自社にとって最適な資金調達の方法を見つけることが可能です。

自動車販売/整備店に特化した事業支援サービスを提供するビズピット株式会社では、事業拡大に必要な資金調達のノウハウを持っています。初回相談は無料ですので、資金調達の方法で悩んでいる方は、以下からお気軽にご相談ください。

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