自動車整備工場をめぐる経営環境は、決して楽なものではありません。社会の変化と共に事業のあり方も変わってきています。
このため、今後も自動車整備工場が生き残り成長していくためには、地域でしっかりとした基盤を築き、地域の人に求められる存在としてあり続ける必要があります。
自動車整備工場が、地域の人に何を求めているのか、何を提供すれば喜んでもらえるのかを十分に理解し、実践していかなければ、その自動車整備工場の未来は厳しいものになるでしょう。
本記事では、自動車整備工場が地域の人たちから求められていることを解説し、選んでもらうためのポイントを挙げて説明します。また、実際に地域の住民の支持を集め、成果をあげている事例も併せて紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。
自動車整備市場は市場が大きい
時代と共に自動車は変革を続け、利便性と安全性を高めています。電気自動車や自動運転など、これからも新しい技術を取り入れた自動車が次々と現れるでしょう。
しかし、自動車の技術革新がいくら進んだとしても、自動車にはメンテナンスが必須です。整備が全く不要な自動車を作ることは、不可能でしょう。つまり、自動車を整備するサービスは、時代が変わったとしても必要であり、多くの需要が継続的に見込まれます。自動車整備業界は厳しい状況に置かれていますが、これだけ大きな市場のある産業ですので、やり方次第では、まだまだ大きな利益を狙えるでしょう。まずは、大切な顧客となる地域の住民にしっかりと認知されることが非常に重要です。
自動車整備工場が地域から求められている9つのこと
自動車整備工場が地域の住民に必要な存在となるためには、住民から何を求められているのか認識しておく必要があります。
ここでは、自動車整備工場が地域から求められている9つのことを取り上げ、詳しく解説します。
専門的なスキル
地域の住民が自動車整備工場に求めているのは、専門的なスキルです。自動車整備のプロとして、年式の古い車から最新の電気自動車まで、多種多様な車種に対応できる専門技術を備えているところであってほしいと願っています。
一般の人にとって、自動車のメカニズムや整備方法などは、よく分からないものです。とりあえず普通に動いてくれればよい、という程度のものでしょう。何かあったときには「自動車整備工場がすぐになんとかしてくれる」と考えています。
最新設備の導入
自動車技術は年々進化を続けているため、自動車整備工場でもそれに対応した設備が求められるようになっています。
自動車整備の専門技術はもちろん重要ではありますが、一般のユーザーは新しい診断機器や工具を導入した、より正確で効率的なサービスを受けられる自動車整備工場を望むでしょう。
消費者の目線からいうと、常に新しい技術や設備にアップデートしている自動車整備工場に自分の車を扱ってもらいたいと思うのは当然です。しかし、設備を更新するには多大な費用が必要であり、それを使いこなす技術やノウハウも必要です。
自動車整備事業者としては、厳しい要求のように思われますが、消費者のニーズに対応していける企業が生き残る時代です。
サービスの質
サービスの質は、自動車整備工場が地域社会において信頼と評価を得る上で最も重要な要素の一つです。
顧客が期待するサービスの質を確保するためには、以下の点が重要です。
- 専門技術の向上：定期的な研修や最新技術の習得により、スタッフの専門技術を常に最高水準に保つ。
- 顧客対応の質：顧客一人ひとりの要望に耳を傾け、信頼関係を築くための高いコミュニケーション能力。
- 設備の最新化：修理やメンテナンスに必要な機器や設備を最新のものに更新し、効率的かつ正確なサービス提供を行う。
- 透明性の確保：修理内容や費用に関する透明性を高め、顧客が納得のいく情報提供を行う。
これらを兼ね備えた自動車整備工場はサービスの質が高いと評価され、顧客満足度は向上します。サービスの質が高いほど、顧客のリピートや口コミによる新規顧客の獲得にもつながります。結果として事業の持続的な成長に貢献することが可能なため、サービスの質にはこだわるようにしましょう。
実績や信頼性
これまでに積み重ねてきた実績や信頼性は、何よりも大切にすべきです。長い歴史と実績がある工場は、地域の人々から高い信頼を得ているおかげで継続できているといえるでしょう。
近年では、ウェブ上での口コミでサービスの質を判断する人が増えています。口コミやレビュー、地域での評判は新しい顧客を引きつける大きな要素であり、良い評価は信頼性の高いサービスが提供されている証拠です。自動車整備工場では、こうした声が集まるような工夫が必要です。
実績や信頼性を分かりやすく発信し、安心して来店してもらえるような仕組みづくりをしていきましょう。
スピーディーな整備対応
自分の自動車が故障や事故で使えなくなった顧客は、一刻も早く元に戻してほしいと思っています。車がない生活は非常に不便で、代車を用意してもらったとしても、大きなストレスがかかっています。
そのため、自動車整備工場では作業の品質だけでなく、スピーディーな対応も求められているのです。顧客をなるべく待たせないようにする姿勢が大切です。
コストパフォーマンス
価格はサービスを選ぶ際の重要な要素ではありますが、安ければよいというものではありません。価格がサービス内容や品質に見合っているか、ということが常に見られています。
自動車整備工場において、顧客が満足するサービスや品質を提供することが最低条件です。その上でリーズナブルな価格であることで、地域の住民から支持を得られるようになります。
価格は安いに越したことはありませんが、整備内容によっては高額な費用がかかることもあるでしょう。しかし、整備内容と価格の関係についてしっかりと根拠を示し、丁寧に説明して顧客が十分納得すれば問題はありません。なぜ、その値段になっているのか、理解しやすいことが非常に重要です。
アフターケア
自動車は定期的なメンテナンスが必要ですが、多くの人はメンテナンスに無頓着で、ほとんど気にしていません。
そこで、自動車の整備や車検が完了した後にタイミングよく連絡して、その後の車の状況を確認するなどのアフターケアがあると安心感につながります。修理・メンテナンスに関するアドバイスや、無料点検などを適宜お知らせしてもらえると、顧客は心強く思うものです。
また、アフターケアを丁寧に続けていると、心理的な距離が縮まります。自動車に不具合が発生した時にはすぐに連絡しようという気持ちになるでしょう。
しつこい営業だと思われないように注意しながら、顧客のサポートを続けていきましょう。
対応の柔軟性
自動車整備工場を訪れる顧客のニーズは人それぞれです。ニーズに対して柔軟に対応できるかどうかで、利用者の評価も大きく変わってきます。顧客が置かれた状況や要望に合わせて、予約時間の調整や代車の提供、輸入車の整備対応ができると非常に喜ばれます。
もちろん顧客の言うことをすべて受け入れる必要はありません。業務オペレーションは平準化したほうが効率的で、個別対応が増えると時間のロスが大きくなります。柔軟に対応すべきことと、効率的に処理することを適切に分けて業務を行っていくようにしましょう。
環境への配慮
近年は異常気象が続き、環境問題に対する関心が世界的に高まっています。誰もが環境に配慮する必要があり、自動車整備事業者も環境への影響を無視して活動はできません。
自動車整備工場が事業を継続していくためには、環境対策を実施し、エコフレンドリーな商品とサービスを提供していく必要があります。フロン回収、使用済み自動車のリサイクル部品の再使用、使用済み自動車の適正処理など、できることをしっかり行い、地域社会に貢献することが重要です。また、自社の取り組みを積極的に発信していくことは、地域住民からの信頼につながります。
自動車整備工場が自社を地域の方に選んでもらうためのポイント5つ
これまで以上に地域の方を大切にして関係を深めることが、自動車整備事業を安定して続け、発展させていくために必要です。
地域の方に選んでもらうためには、どのように事業を進めていけばいいのか、5つのポイントをあげて解説します。
インターネットでの発信
現代では、インターネットを使った情報発信は不可欠となっています。パソコンやスマートフォンの普及によって、ユーザーの情報収集の手段はインターネットを通じて行うことが主流となっているためです。
新たな商品やサービスを購入・利用する前に、ほとんどの顧客はインターネットを使って情報を確認しています。その際に情報が少ないと購入・利用することを不安に思うでしょう。特に近年ではSNSを通じて情報を入手する人が増えており、自動車整備工場もSNSへの対応は必須です。
しかし、多くの自動車整備工場では、情報発信を積極的に進められていません。逆に言えば、インターネットを活用し、自社サイトやSNS、Googleマイビジネスなどを通じて情報を発信していくことは、他社との差別化につながります。
自動車整備の質の高さの証明
自動車整備工場には高い技術力が求められていますが、ほとんどの人は質の違いが分からないものです。高い技術力があるのならば、誰の目にも明らかな形で証明することが必要です。
近年では自動車の自動化・電子化が進められており、対応するためには電子制御装置整備の認証が必要になるなど、さまざまな制度が設けられています。今後は、そうした認証を取得することが技術力のアピールとなります。
例えば、自動車整備工場の技術や設備に対して、総合的な認証を行っている「テュフ認証」という制度があります。「テュフ認証」は、ドイツに本社を置くテュフ・ラインランドが実施している認証制度で、同社が定めた基準をクリアした自動車整備工場に対してのみ与えられるものです。こうした認証は自社の技術力の対外的なアピールとなりますので、積極的に取得していくことが重要です。
自社のサイトでは保有する認証や資格を掲載し、設備の写真などもできる限り公開していきましょう。修理事例のビフォー・アフターの写真を多く見せることも、技術力の高さを示す証拠となります。
このように、地域の方の信頼を得るためには、自社の技術力を分かりやすい形でアピールしていくことが重要です。
特別なプロモーションや割引
新たな顧客を引きつけ、既存の顧客にまた来てもらうためには、プロモーション企画が必要です。顧客は待っているだけでは来てくれません。なにかしらの仕掛けを用意して、こちらからアプローチしてくことが大切です。
チラシやWeb広告を展開する場合も、フックになる割引企画やプレゼント企画がないと反応を取ることは難しいでしょう。サービスを安売りするだけではなく、価値があることをしっかりとアピールした上で、限定的に値引きするなど工夫をすると反応が違ってきます。
効果的な割引のためには、他の自動車整備事業者がどのようなプロモーションをしているかをリサーチすると同時に、異業種が行っている企画で参考になるものがないか、常にアンテナを張っておくとよいでしょう。自動車整備事業者がやっていない販促企画を見つけられるかもしれません。
プロモーションを実施した際には必ず、効果確認をしましょう。改善点をピックアップでき、次回の販促に生かせます。
「これをやれば絶対成功する」というプロモーションはありません。試行錯誤しながら改善し、効果を高めていく姿勢で続けていきましょう。
口コミと評判の管理
地域密着型のビジネスを展開していく上で、口コミやユーザーの評判は、集客に非常に大きな影響を与える要因です。
飲食業では、食べログなどの評価が大きなインパクトになることが知られています。いったん悪い評価がついてしまうと、回復するのが大変です。飲食店のオーナーたちは、こうしたネット上の口コミ・評判に非常に気を遣いながら運営をしています。
今後は自動車整備工場においても、ユーザーの口コミや評判を大切にしていく必要があります。特に、Googleマップと連動したGoogleマイビジネスでは、店舗の情報と共にユーザーの評価や口コミが掲載されますので、自社でしっかり運営し集客のツールとして活用していきましょう。具体的には、サービスに満足した顧客に対してGoogleマイビジネスに感想を書き込んでもらうことをお願いし、良い評判を増やしていってください。自社のWebサイト上にはサービスに満足したユーザーの声を写真付きで掲載すると、評判の良さの信ぴょう性が高まり効果的です。
自分からアプローチしないとインターネット上で良い評価を集めるのは難しいので、仕掛けを考えて取り組んでいくと良いでしょう。
カスタマーサービスの徹底
自動車整備事業者がユーザーと接する機会は、対面以外にも電話、メールなどがあります。このときの対応もユーザーから評価の対象となっています。昔ながらの職人のように、ぶっきらぼうな対応をしていては、いくら自動車整備の技術が高かったとしてもユーザーの評価は低いものとなります。
顧客と接する際には、相手が気分よく接することができるようにあいさつや笑顔、言葉遣いといった基本的な応対が必要です。全ての従業員が同じレベルの接客を実行できるように、企業全体で研修や教育をしていくことが重要です。
自動車整備工場において入庫数が増加した事例4選
入庫数の確保に頭を悩ませている自動車整備事業者も多いのではないでしょうか。地方では特に人口減少の影響もあり、自動車保有者の数も減ってきている状況です。
そうした中でも独自の取り組みや工夫を重ねて、入庫数を増やしている自動車整備工場もあります。ここでは、入庫数アップに成功した事例を４つ取り上げて紹介します。
輸入車の整備を宣伝し入庫が増えた事例
輸入車ユーザーの中には、車の整備をどこに頼めばいいか悩んでいる方も少なくありません。ディーラーであれば品質は間違いないのですが、費用が高くなる傾向があるためです。一方、地元の自動車整備工場では輸入車の整備を扱っていないことが多く、取り扱っていたとしてもサービスの品質や納期、価格面で満足できるところが見つけにくいという不満がありました。
ある自動車整備工場では、そうした悩みに対応して、輸入車の整備に力を入れていることをアピールする広告を制作して展開しました。自社のWebサイトを充実させ、輸入車の整備実績が豊富であること、整備に必要なパーツ類がそろっていること、自動車整備の実力が十分にあることを証明する認証を受けていることを分かりやすく掲載した上で、Web広告を使ってWebサイトへユーザーを誘導しました。
さらに、Googleマイビジネスにも力を入れており、定期的な更新を行うと同時に、口コミを通じて輸入車の整備に強みがあることをアピールすることで、信頼性を獲得しています。それらに加えて、月ごとにキャンペーンを実施することで、入庫数アップにつなげました。
オンライン予約システムを導入し効率化を果たした事例
ある自動車整備工場では入庫の予約を対面や電話で行っていました。整備スタッフが対応する場合は、整備作業がそのたびに中断してしまいます。１回の対応は10分〜15分程度ですが、1日に何度も予約が入るため、時間を大きくロスしていました。
そこで、オンライン予約システムを導入し、業務の効率化を図ることにしました。しかし、システムを導入しただけでは、ユーザーはシステムを利用してくれません。そのため、オンラインからの予約には割引サービスをつけ、チラシを作成して顧客に宣伝しました。ユーザーにとっては、電話や対面よりもWebで予約が完結するほうがありがたいと感じる人も多く、オンライン予約システムは次第に浸透していきました。
こういった工夫により、整備スタッフが入庫予約に対応する手間を大幅に削減できたことで、業務効率が格段に向上しました。スタッフの残業時間が削減され、年間休日が増えるなど、待遇改善も進みました。また、トータルでのコストが下がったため、割引キャンペーンなどを実施できるようになり、顧客の満足度も上がっています。
地域イベントへの参加で知名度を上げた事例
自動車整備事業は地域密着型ビジネスですので、地域の人に認識されることが重要です。
新しく自動車整備工場を立ち上げた企業では、なじみがない地域の人たちとの接点を増やすため、積極的に地域のお祭りなどに出店したり、イベントの協賛をしたりしました。イベントでは自社の名前が入った法被を着用し、プレゼント企画を行うなどの取り組みによって、知名度を高めることに成功しています。さらに、自動車メンテナンス講座などを無料で実施し、参加者からの信頼を集めることで、確実に入庫数が増加しています。
環境に配慮したサービスで差別化を図った事例
各地の運輸局では、環境に優しい自動車整備事業者の審査項目を設定しており、多数の項目をクリアした事業者に対して毎年表彰を行っています。環境問題は、多くの人の関心事となっており、環境負荷をかけないサービスを提供している事業者を選ぶ人も増えているようです。
表彰を受けた企業では、環境への配慮を他社との差別化に活用しています。自社サイトやチラシなどでも環境に配慮した企業であることを強くアピールしました。それを受けて、入庫数が徐々に増加傾向にあります。
まとめ
自動車整備工場が今後も生き残っていくためには、地域の住民の方に求められる存在になる必要があります。そのためには、社会の変化に対応し、自社の良いところを自ら発信していかなければなりません。昨今はインターネットが情報発信手段の主流となっています。自社のWebサイトを充実させることはもちろん、SNSやGoogleマイビジネスなどを活用することが必要です。まずは、できることから取り組んでみてはいかがでしょうか。Web上の施策は結果が出るまで時間はかかりますが、続けていくことで、大きな成果へとつながります。
自動車販売、自動車整備に特化した事業支援サービスを提供するビズピットでは、自動車整備工場に関するさまざまな相談を受け付けています。自動車整備工場の開業や広告戦略、売り上げアップの施策についても詳しく説明させていただきますので、ぜひご相談ください。
初回相談は無料ですので、開業について悩まれている自動車整備事業者の方は、以下からお気軽にご相談ください。
