自動車整備事業者が外国人技能実習制度を有効活用するためには?

外国人技能実習制度とは、国際貢献のために途上国の人材を日本で一定期間受け入れ、技術やノウハウを移譲する制度です。今回の記事では、自動車整備事業者の皆さまに向けて、技能実習制度の概要整備事業者が国際交流以上の価値を見出すためには、どのように制度を活用すればいいのかご説明します。

【目次】
1 そもそも外国人技能実習制度とは?
2 技能実習生にはどのような整備業務を任せられる?
3 外国人技能実習制度を整備事業者が受け入れる際の注意点
4 整備事業者が外国人技能実習制度を有効活用するためにはどうすればいいか?
 4-1 将来的に整備士不足を解決するための布石とする
 4-2 自社事業の海外展開を見据えた関係構築
5 特定技能制度の活用
6 まとめ

そもそも外国人技能実習制度とは?

かねてより、日本では東南アジアを中心とした発展途上国の人材を受け入れ、経済発展を担う「人づくり」に協力する「外国人技能実習制度」が実施されています。その制度において、日本に在留する実習生を受け入れることが可能な職種は厚生労働省によって定められており、自動車整備業務も含まれます(※1)。

自動車整備業界は、人材不足や後継者不足などの問題が近年顕在化していました。それを深刻視した国土交通省により、人手不足が問題となっている自動車整備業務も「特定技能」として認定(※2)され、即戦力となる特定技能資格を持つ外国人材の受入れが可能になった背景があります。

このことから、技能実習生にとっては先進国の技術が習得でき、自動車整備事業者にとっては人手不足の悩みを解決できるWin-Winの関係が成立する制度と言えるでしょう。

技能実習生にはどのような整備業務を任せられる?

外国人技能実習制度は、非営利の管理団体を通して受け入れるケースがほとんどで、企業単独で実習生と雇用契約を結ぶケースは全体の数%程度です(※3)。技能実習生は「技能実習1号」「技能実習2号(1、2年目)」に大別され、技能習得の成果が一定水準以上だと認められた場合に1号から2号への変更ができ、対応業務の範囲も広がります(図1)。

図1.技能実習生に任せられる作業範囲 
技能実習生
(資料)「自動車整備業における外国人技能実習生の受入れガイドブック」(国土交通省)をもとに、ビズピット作成。

自動車整備の関連作業として、ナビ・ETCなどの電装品取付作業や車体車枠の整備調整作業、自動車板金塗装作業なども任せられます。

外国人技能実習制度を整備事業者が受け入れる際の注意点

外国人技能実習制度は非常に有意義な制度ではありますが、言語や文化の違いなど、さまざまなハードルも存在します。

技能実習生に対しては計画内容を実施前に十分説明し、技能実習計画の進捗度合いを記録する技能実習日誌を作成するよう、国土交通省によって定められています。

当然、労働時間に関しても、労働基準法をはじめとした労働関係法令に基づいて適切に管理しなければなりません。日本でも、技能実習生に対しての賃金未払いや、労働基準法を逸脱した長時間労働を強いる企業がたびたび発生し、問題となっています。自動車整備事業者としても、事前に外国人技能実習制度の意義や受け入れ方法について再確認しておきましょう。

整備事業者が外国人技能実習制度を有効活用するためにはどうすればいいか?

外国人技能実習制度では、技能実習生の受け入れ可能な期間に制限があり、通常は3年、最大でも5年です(※4)。この限られた期間の中で、自動車整備事業者側が制度をより有意義に活用するためには「将来的に人手不足を解決するための布石とする」「自社の海外展開も見据えた関係構築」などを意識すると良いでしょう。

将来的に整備士不足を解決するための布石とする

技能実習制度を通して外国人材採用のノウハウを形成すれば、将来的には日本国外の人材もより採用しやすくなるメリットがあり、整備士不足を解決するための布石となります。技能実習制度から、さらに外国人採用を拡大する手段としては「高度外国人材」の活用もあります。

高度外国人材は滞在期間に制限がないのが特徴で、雇い入れにより、日本の整備士と技能実習生とのコミュニケーションの架け橋にもなります。実習生と同じ言語や文化に精通したベテラン整備士が新人実習生を教育する仕組みを作れば、コミュニケーションコストを抑えつつ、技能実習生に対し、より効果的に整備ノウハウを移譲できるでしょう。

技能実習制度を通して得たノウハウを活かし、人材育成の仕組みを整え、外国人整備士を多く育成することによって、日本人整備士の手間を削減したり、新人の日本人整備士育成に応用したりといった取り組みも検討できます。

自社事業の海外展開を見据えた関係構築

技能実習制度は、派遣元の国で活躍する優秀な人材を育てることにあります。そして、将来的には母国に帰った元技能実習生と国家間を跨いだ協業関係を築ける可能性があるのです。

例えば、技能実習制度を実施している国のひとつであるベトナムは自動車産業が成長傾向にありますが、自動車の供給に対して各分野の人材育成が追いついておらず、今後の発展のためにも外国企業との協業関係が必要であると推測されます。そのため、日本の自動車整備事業者としては、持っている技術やノウハウをベトナム現地で提供するといった方向でビジネスを展開することも検討できるのではないでしょうか。

特定技能制度の活用

外国人材の採用という観点から見た場合、特定技能制度の活用も視野に入れることができます。特定技能制度は、中小・小規模事業者の深刻な人材不足を解決するため、一定の専門性を有した外国人材を受け入れる仕組みで、2018年12月に制定されました。(※5)

技術的な国際貢献を目的とした外国人技能実習制度とは違い、日本の人材不足を解決するのが目的の制度です。この制度で受け入れる外国人材には自動車の定期点検整備、自動車の分解整備を任せることが可能(※6)で、自動車整備事業者としてもより人材不足問題の解決に繋がりやすいでしょう。

特定技能制度において、受け入れた外国人材は5年の在日が可能となり、受け入れ規模も大きく、注目度も高い制度です。コロナ禍による渡航制限などで当初の計画よりも受け入れ数は少なくなりましたが、2021年は9月末時点で自動車整備分野でも466人(※7)の在留外国人を受け入れています。

特定技能制度に加え、前述の外国人技能実習制度における滞在可能な最大年数の5年と合わせれば、特定の人材が最長10年も日本に留まることも可能です。

まとめ

技能実習制度はコミュニケーションコストがかかり、最長5年までしか雇い入れることができませんが、平均年齢が上昇し、担い手が少なくなってきている日本の自動車整備業界では有効な人材確保の手段です。

自動車整備事業者側が技能実習制度をより有意義なものとして享受するには、将来的な人材不足への対策や、海外での事業展開などを見据えて外国人材との関係構築を行なうのが良いでしょう。

大阪・兵庫のビズピット株式会社でも、海外メンバーとの勤務経験やパートナーを含めた海外人脈を活かし、外国人技能実習制度採用や自動車整備事業者の皆さまの海外進出をサポートしていきます。





【引用】
※1
・技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(83職種151作業)
https://www.otit.go.jp/files/user/statistics/210108-6.pdf

※2
・国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_SSW.html

※3
・国土交通省
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/user/expat/pdf/guide.pdf

※4
・外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=428AC0000000089_20200330_429AC0000000014

※5
・特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針について
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/gaikokujinzai/kaigi/dai3/siryou1-2.pdf

※6
・自動車整備分野における外国人の受入れ(在留資格:特定技能)
https://www.mlit.go.jp/common/001282295.pdf

※7
・特定技能1号在留外国人数
https://www.moj.go.jp/isa/content/001357709.pdf

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