【自動車整備士の未来】今後必要とされる人材採用と育成のポイント

近年、自動車の販売台数の減少整備作業の自動化などにより、自動車整備業界は変わりつつあります。また、整備士数は減少しており、整備業界は人手不足に陥る可能性が懸念されています。

更に、今後は整備士業界でもIT導入が盛んになることが予想されます。本稿では、日本の車両整備業界と自動車整備士の実態に迫ります。そして、変わりゆく自動車整備業界でどのように対応していけばいいのか、必要とされる人材の採用と育成について考察していきます。


【目次】
1 自動車整備業界では人手不足が起こっている
2 変化する自動車業界
3 業界変化に伴い整備士を取り巻く環境も変化する
4 今後活躍する自動車整備士とは?
5 外国人材の活用を視野に入れる必要性も
6 ITを活用したプロジェクトも進行中
7 まとめ

1.自動車整備業界では人手不足が起こっている

日々感じている経営者の方もいるかもしれませんが、自動車整備業界では人手不足が起こっています。平成31年(2018年)自動車分解整備業実態調査結果(※1)によると、平成26年(2013年)からの5年間で、整備士の人数はおよそ4.5%減少しています。

平成27・28年には、国土交通省(以下国交省)が「自動車整備人材確保・育成推進協議会(※2)」を開催しました。この頃から、政府として整備士人材育成を主導しようとしていました。しかしながら、未だ成果には結びついていないことが伺えます。

自動車整備士の人数が減少している原因として、以下の点が考えられます。

・少子化
・消費の多様化などによる若者の車離れ
・職業選択の多様化による整備士離れ

国交省の参考資料 (※3)によると、整備学校への入学者数自体も減少傾向(図1)にあり、若い整備士が入ってこないことで整備士全体の平均年齢も上昇(図2)していることがわかります。


図1.JAMCA、整備専門学校入学者数の推移


図2.自動車整備士の平均年齢の推移

2.整備業界だけでなく自動車業界全体が変化している

自動車業界が進めていくべきトレンドとして、「CASE(ケース)」があります。CASE(ケース)とは、以下の単語の頭文字をとった造語です。

・Connected:コネクティッド
・Autonomous:自動運転
・Shared & Services:カーシェアリングサービス
・Electric:電気自動車

車の保有台数は減少傾向にある一方で、電気自動車・ハイブリッドカーなどの普及、カーシェアリングサービスの増加に伴い、自動車業界は大きく変化しています。特に、精密センサーを搭載したASV車のシェア拡大で、今後専用のスキャンツールが必要な整備点検業務が増える見込みです。それに伴い、ITに強い整備士の需要が高まることが予測されます。

また、過疎地を中心とする地方では今後「トータル・カーライフ・サポート」も促進されると考えられています。地方で自動車整備会社が生き残るためには、整備・販売業者などが専業工場を介してネットワークを構築し、ユーザーの幅広いニーズに一度に対応することが求められます。

3.業界変化に伴い整備士の賃金も上昇する

以上のように、自動車業界のビジネスモデルはこれから大きく変化すると考えられます。同時に整備士を取り巻く状況にも変化が見られるでしょう。給与面の待遇に関しては、人材不足に伴い、上昇することが予測されます。

厚生労働省が公開している賃金構造基本統計調査結果(※4)によると、令和元年(2019年)の自動車整備士の年収は440万8,200円でした。これを2010年時点での年収384万3,100円と比較すると、10年間で56万5,100円年収が上昇した計算になります。

整備士の賃金上昇は、業界の人手不足による整備士一人当たりの負担の増加整備業務の専門性の上昇などの要因が働いた結果であると分析できます。この傾向はこれからも続くことが予測され、今後長期にわたり年収が上昇していく可能性は大いにあるといえるでしょう。

車両整備事業の経営者は、上昇する整備士の給与に対応をしていくことが求められます。

4.今後活躍する自動車整備士とは?

今後は、自動車整備士にもITなどの専門性が求められてくることが予測されます。2020年時点で、自動車に関する全ての整備を行うためには1級整備士(※5)の資格が必要でした。ハイブリッド車・電気自動車・水素自動車などの普及に伴い、今後は1級レベルのスキルがスタンダードになってくる可能性もあります。

整備業界全体がITを導入すれば、整備記録だけでなく顧客情報なども含め全ての情報を電子データで管理するようになるかもしれません。それをふまえ、これからの整備士は、整備技術だけでなく最新のITツールを扱える技術力と顧客の情報を扱うために必要なコンプライアンスを身につけていく必要があると考えられます。

また、トータル・カーライフ・サポートにより事業者同士の連携が増えれば、コミュニケーション力も必要になってくるでしょう。

5.外国人材の活用を視野に入れる必要性も


日本における自動車整備業界の人手不足は大きな問題です。それを解消するため、政府は外国人技能実習制度を導入し、特定技能外国人の受け入れを図っています(※6)。


※図3 出典 国土交通省 (参考資料1)自動車整備士を取り巻く状況と取組
https://www.mlit.go.jp/common/001092931.pdf

外国人技能実習制度とは、技能移転を通じた開発途上地域への国際協力を目的として外国人材を受け入れる制度です。この制度に、新たな在留資格として特定技能が創設され、自動車整備分野が指定されました。

自動車整備業における技能実習と特定技能のレベルには技能実習1号から3号まであり、資格取得後は特定技能1号として在留資格が与えられます。特定技能1号のレベルは、定期点検整備及び分解整備を1人で実施できるレベルであり、三級自動車整備士に相当します。
人材不足に対応するため、今後はこのような外国人材の採用も視野に入れる必要が出てくるかもしれません。

6. ITを活用したプロジェクトも進行中

人材の確保以外に、業務の自動化も整備士業界の人手不足を解消する一つの手段です。例えば、「Mechanic Board(※7)」は、自動車の過去診断情報を手軽に共有することができるツールであり人材不足の整備業界の助けとなるツールの一つです。このように、今後自動車整備における自動化は、さまざまな面で進んでいくでしょう。

ITを活用して出張車両整備サービスを提供している企業もあります。「Seibii(※8)」は、スマホ・ネット経由で出張整備の依頼を受け付け、指定を受けた時間に現地で車両の整備・修理・パーツ交換を行うサービスを提供するポータルサイトです。

Seibiiに限らず、多くの企業が、整備業界の新たなソリューションを開発しています。将来を見越して早い段階で整備事業にITを取り入れると同時に、ITリテラシーの高い車両整備士の積極的な採用も検討する必要があるといえるでしょう。

7. まとめ

自動車業界の変化に伴い、整備士を取り巻く環境も大きく変化しています。本稿では、このような時代に重要となる「技術力の高い整備士の採用と育成」「外国人材の活用」「ITや自動化の早期導入」について解説しました。

ビズピット株式会社では、最新技術に関して不安な方向けのサポートを行っています。アフターサービス基盤を構築すると共に、車両整備業者・販売店のつながりを強化することも可能です。事業拡大をお考えの方は、お気軽にご相談ください。



【引用】
※1 
・平成31年度 自動車分解整備業実態調査結果の概要について(日本自動車整備振興会連合会)
https://www.jaspa.or.jp/Portals/0/resources/jaspahp/member/data/pdf/H31jittaityousa.pdf

※2
・自動車整備人材の確保・育成に関する検討会〈検討会報告書〉(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001127730.pdf
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk9_000020.html

※3
・「第 1 回自動車整備人材の確保・育成に関する検討会」の開催について(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/001092931.pdf 

※4
・平成30年賃金構造基本統計調査(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2019/index.html

※5
・一級自動車整備士Q&A(日本自動車整備振興会)
https://www.jaspa.or.jp/mechanic/faq/1st_qa.html

※6
・自動車整備分野における外国人の受入れ(国土交通省自動車局)
https://www.mlit.go.jp/common/001282295.pdf

※7
・Mechanic Board公式サイト
https://www.mechanic-board.com/

※8
・Seibii公式サイト
https://seibii.co.jp/

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