自動車整備に詳しくない自動車ユーザーへ予防整備を訴求する方法を解説

予防整備は、故障を防ぐためにこまめに行う整備です。自動車整備事業にとって、予防整備は日常的に行う業務です。そのため、予防整備の顧客単価を上げることで利益の増加が期待できます。また、予防整備を効果的に訴求することができれば、ユーザーの自動車の故障も減ると考えられます。結果として、利益だけでなくユーザーの満足度向上にもつながるでしょう。

本稿では自動車整備事業者向けに、予防整備を効果的にユーザーへ訴求する方法について解説します。

【目次】
1 予防整備の顧客単価が上がらない原因
 1-1 自動車ユーザーは予防整備に価値を感じにくい
 1-2 予防整備の顧客単価を上げるための考え方
2 半年ごとに点検を行ったほうが生涯の整備費用は安くなる
3 予防整備を行うと自動車のメンテナンスコストが安価になる理由
 3-1 定期的に整備することで故障が発生しづらくなる
 3-2 予防整備を行わないと燃費が悪くなる
 3-3 メーカーの保証を受けられないことがある
4 予防整備を行うことによる自動車整備事業者のメリット
 4-1 不具合が発生する前の整備は作業工数が少なくて済む
 4-2 継続的な入庫につながりやすい
5 まとめ

予防整備の顧客単価が上がらない原因

予防整備は自動車の故障や事故を未然に防ぎ、多くの人の安全を守ることができます。しかし、自動車ユーザーは整備内容に詳しくないため、整備の必要性を説明するのが難しく、顧客単価を上げづらいのが現状です。

自動車ユーザーは予防整備に価値を感じにくい

予防整備について興味がない自動車ユーザーは多く、「整備になるべく費用をかけたくない」と感じている人も一定数存在します。自動車の性能向上により、不具合が発生しづらくなっているため、予防整備に緊急性や重要性を感じにくくなっていることが理由として挙げられます。

しかも、予防整備にかかる費用は決して安くありません。部品によっても金額に大きな差があり、ワイパーゴムのような数百円で購入できる部品から、バッテリーやタイヤのように数千円〜数万円かかるような部品も存在します。

自動車整備事業者は予防整備で利益を上げるために、自動車ユーザーが予防整備の必要性を納得できるような説明を行い、交換作業を実施する必要があります。

予防整備の顧客単価を上げるための考え方

予防整備で単価を上げるためには、「商品単価」と「商品点数」を増やす必要があります。

高単価商品を購入してもらうためには、その金額を支払うだけの重要性があることを自動車ユーザーへ説明する必要があります。また、単価が高くなるほど自動車ユーザーの支払いの負担が大きくなるため、整備の必要性をなるべく早い段階で自動車ユーザーへ知らせることも大切です。

商品点数を増やすためには、自動車の状態を網羅的に調べる必要があります。多くの商品の交換を提案するのは、定期点検や車検のときに行うのが自然です。定期点検時に交換する商品は単価の低い消耗品であることが多いため、自動車ユーザーへの訴求はしやすいでしょう。

<顧客単価の価値の認知・訴求の方法>
顧客単価の価値の認知・訴求の方法


しかし、なるべく費用をかけたくない自動車ユーザーにも納得してもらえるよう、効果的に整備を説明するのが難しいと感じる自動車整備事業者も多いでしょう。技術的な説明に偏ってしまい、自動車ユーザーが知りたい情報を説明できないケースも見受けられます。

半年ごとに点検を行ったほうが生涯の整備費用は安くなる

予防整備の実施について自動車ユーザーに納得してもらうためには、予防整備の重要性を伝えるだけではなく、自動車ユーザーが興味を引くような説明をする必要があります。

弊社で行ったアンケートを分析した結果、半年ごとの点検費用が一定金額以下であれば、半年ごとに点検を行ったほうが整備の生涯費用が安くなる可能性があることが分かりました。このような分析を自動車ユーザーに説明すれば、ユーザーも予防整備をするメリットが理解できます。

(本レポートをご入用の方はこちらより「予防整備のレポート希望」とご連絡ください。)

定期点検で場当たり的に劣化している部品を発見し、交換しているだけでは、自動車ユーザーが予防整備に価値を見いだすのは難しいでしょう。しかし、予防整備が自動車にかかるコストを最も少なく抑えるための方法であると自動車ユーザーが認識していれば、予防整備を積極的に受けるようになります。結果として、自動車整備事業への信頼感が高まります。

交換される部品について自動車ユーザーが詳しく理解していなくても、整備内容に応じた費用を支払うことにも納得してもらえます。

予防整備を行うと自動車のメンテナンスコストが安価になる理由

予防整備が自動車のメンテナンスコストにどのような影響を与えるのか解説します。

定期的に整備することで故障が発生しづらくなる

車の消耗品を適切な時期に交換することで、大きな故障の発生を防ぐことができます。

たとえば、エンジンオイルの交換は、1回につき5,000円程度の費用がかかります。しかし、これを怠るとエンジンが焼き付いて故障してしまう可能性があります。焼き付いて動かなくなったエンジンを載せ替えるためには、数十万円といった大きな費用がかかります。半年ごとにエンジンオイルを交換する費用を支払っても、エンジンを交換するより安価に済むのです。

自動車に使われている消耗品はエンジンオイルの他にも数多く存在し、それぞれを適切な時期に交換することで故障を未然に防げます。

予防整備を行わないと燃費が悪くなる

予防整備を怠ると燃費が悪くなり、予防整備を適切に行っている自動車よりもガソリン代が多くかかってしまうことがあります。

たとえば、タイヤの空気圧が低下すると、転がり抵抗が大きくなり燃費が悪くなることは有名です。JAFが2021年10月に行ったテストによると、空気圧が適正よりも30%少ないタイヤでは燃費が4.6%悪化、60%少ないタイヤでは燃費が12.3%悪化するといった結果が出ています(※1)。

さらに、エンジンオイルやCVTフルードといった油脂類の劣化は自動車の機能低下を招き、燃費が悪化することが知られています。これら多くの要因が燃費へ影響するため、適切な予防整備を行うことで、ガソリン代も安く済むのです。

メーカーの保証を受けられないことがある

定期点検を実施していない自動車は、保証期間内であってもメーカー保証を受けられない可能性があります。メーカーが保証整備を行う条件として、「法令で定められた点検・整備の実施」が挙げられているためです(※2)。

通常は保証期間内に対象部品が故障すると、ディーラーなどで保証整備を実施してもらえます。整備にかかる費用が高額であっても、自動車ユーザーに原因がなければ基本的に料金は無料です。

しかし、普段からディーラーでメンテナンスをしていない自動車は、「法令で定められた点検・整備の実施」を証明する必要があります。定期点検の実施を記録したメンテナンスノートや定期点検記録簿を提示できない場合、保証整備を受けられない可能性があるのです。その場合は、自動車ユーザーが実費で整備を行う必要があります。

予防整備を行うことによる自動車整備事業者のメリット

予防整備を適正に行うことで利益が上がり、自動車ユーザーの信頼を得ることができます。それ以外にもある予防整備のメリットをご紹介します。

不具合が発生する前の整備は作業工数が少なくて済む

予防整備の実施は、自動車整備事業にとって効率良く利益を上げられる方法です。予防整備は、劣化している部品を発見し「部品交換」を行うだけで整備が完了するためです。

しかし、すでに不具合症状(異音・警告灯の点灯・エンジン不調など)が発生している場合は、「症状の確認」「原因の特定」「部品交換」「改善の確認」といった多くの工程が必要です。再現性が低い不具合や、難易度の高い診断を要する場合は、診断に多くの時間がかかる場合があります。さらに、誤診してしまった場合は、整備にかかった費用を自動車ユーザーに請求できない場合もあります。

故障診断も自動車整備事業の重要な仕事の一つではありますが、不具合が起きる前に整備して、劣化部品を取り替えるほうが効率的です。

継続的な入庫につながりやすい

予防整備を行うと、同じ自動車ユーザーから継続的に入庫してもらいやすくなるでしょう。

予防整備を前提に自動車の点検・整備をすることで、自動車ユーザーに対して長期的な視点でアドバイスを行うことができます。半年後や一年後に必要になりそうな整備について、あらかじめ見積書を作成し説明しておけば、大きな費用が必要になる場合でも自動車ユーザーは安心して整備を受けることができます。

同じ自動車が継続して入庫すると、整備履歴のデータから次回入庫時に整備が必要な箇所の予想もしやすくなります。そのため、抜け漏れのない点検がしやすくなります。

まとめ

予防整備によって自動車の故障や事故を未然に防ぐことができ、自動車ユーザーの安全確保にも大きく貢献します。しかし、整備内容に詳しくない自動車ユーザーが多く、重要性の高い整備について説明しても理解してもらえないケースは珍しくないでしょう。

そこで、自動車ユーザーが予防整備に興味を示すように、効果的な訴求を行うことが必要です。それによって顧客単価が上がるだけでなく、顧客の満足度の向上も期待できます。

この記事では、一般的な事例を元に顧客単価を上げる方法を紹介しました。ビズピット株式会社では、御社の状況に合わせてさらに顧客単価を上げる方法もご提案させていただきます。自動車アフターサービス事業に関わってきた経験から、予防整備や定期点検の改善をサポートしています。初回の相談は無料ですので、予防整備の改善に興味がある方はぜひご相談ください。

また、ビズピットでは自動車整備業界に関するさまざまな情報をまとめたホワイトペーパーを発行しました。今回紹介したような内容の他にも詳細な情報が載っていますので、ぜひご覧ください。

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【引用】
※1
・JAF タイヤの空気圧不足、燃費への影響は?(JAFユーザーテスト)
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/tire/fuel-efficiency

※2
・トヨタアフターサービス 保証
https://toyota.jp/after_service/support/guarantee/ippan/

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