不動産ビジネスの変化が車両整備業者にもたらす影響

人口分布の変化やマイカー所有者の減少により、今後車両整備業界にはさまざまな需要の変化が起こることが予測されます。本稿では、人口分布の変化が、車両整備業界にどのような影響を与えるのか、不動産業界の変化も踏まえて解説しますので、ぜひ参考にしてください。


【目次】
1 【前提】今後は各県庁所在地で人口集中が起こる
2 都市部の車両整備事業者はシェア型ワークスペースを利用するケースも増える
3 郊外では今後は広いスペースを活用したビジネスチャンスが生まれる
4 車両整備事業者は人口分布の変化にどのように対応するべきか?
5 まとめ

【前提】今後は各県庁所在地で人口集中が起こる

まずは、本稿の前提となる日本の人口分布の変化について見ていきます。みずほ総合研究所が発表したレポートによると、多くの都道府県の県庁所在地で人口集中度が上昇すると予測されています。(※1)

特に、首都圏よりも地方圏の県庁所在地の方が高齢者の人口集中度の上昇は顕著となっています。

各都道府県で中心部への人口集中が発生するということは、郊外は徐々に過疎状態となり、多くの土地が余った状態になる可能性を示唆しています。

このような予測を考慮して、車両整備業者は、どのように対応する必要があるのでしょうか。以下で解説していきます。

都市部の車両整備事業者はシェア型ワークスペースを利用するケースも増える

都市部

近年、都市部を中心として需要が高まっているのが「シェアオフィス」です。シェアオフィスとは複数の企業や個人が共同で利用するオフィスのことで、時間単位月額契約で利用することができます。

大和総研が発表したレポートによると、シェアオフィスの数は増加傾向にあり、多くの企業や不動産事業者が参入しています。(※2)

今後人口集中によって都市部の土地需要が高まると、整備事業者が利用している作業場の賃料等も上昇することが予想されます。そうなれば、整備事業者同士だけでなく異業種の企業も含めてシェア型ワークスペースを活用し、車両整備業務を行う必要性が発生する可能性もあります。

また、シェアオフィスの需要増加の背景には「スタートアップ企業の増加」「SaaSをはじめとするリモートワークに必要なツールの普及」「フリーランスの増加」等もあると考えられています。今後は車両整備業界でも「フリーの整備士」が増え、その受け皿としてのシェア型作業場の需要が増加する可能性もあるでしょう。

カーシェアリング普及による需要の変化にも対応が必要

カーシェアリングが普及しマイカー所有者の人口が減少すると、マイカー向けの車両整備需要が減少することが考えられるでしょう。一方で、カーシェアリング事業者には、カーシェアリングで使用する車両の日常点検を行う義務が生じます。

それを考慮すると車両整備事業者は一般ユーザーの整備需要低下を補填するための対策として、カーシェアリング事業者と繋がり、カーシェアリング用車両の整備業務を請け負うことを検討する必要があるでしょう。

都市部ではカーシェアリングの普及が進むことで、大型マンションにカーシェアリングが併設されることも考えられます。自動車整備場を備え付けたマンションが登場すれば、車両整備事業者にとっても新たなビジネスチャンスとなるでしょう。

郊外では広いスペースを活用したビジネスチャンスが生まれる

田舎

郊外での過疎化が進めば、駅近かどうか等の「利便性」よりも、周りに商業施設はあるのかといった「住みやすさ」を重視した土地に人が集まる可能性が考えられます。

そのような立地では、広いスペースを利用して付加価値を付けた自動車整備場に注目が集まる可能性があります。例えば、自動車整備場の隣に「カー展示場」や「カフェ」等を併設しサービスを展開することで、同業者との差別化を図ることが可能です。

国土交通省の公表しているデータ(※3)によると、地方都市圏の自動車の分担率は都市部よりも高くなっています。そのため、郊外では人口が減っては行くものの、マイカーの台数自体は都市部ほど大きく減少しないことが予想できます。しかし、今後徐々に減少していく見込み顧客を獲得し続けるために「土地の安さを活かしてどのような付加価値を付けた経営を行うか」といった視点が、郊外の車両整備事業者にとっては重要となるでしょう。

※経営資源に関する記事
https://bizpit-kk.com/trend/business-idea/#news

今後は、「物流の自動化」「移動手段のミニバスからパーソナルモビリティへの変化」等も考えられます。名古屋都市センターが公開している「自動運転がまちづくりに及ぼす影響に関する研究(※4)」によると、郊外における自動運転車は、街外れに整備機能を有する駐車スペースを設けて格納・整備をすると予想されています。車両整備事業者としては、地方自治体や異業種の事業者との繋がりを早い段階で形成して、このようなビジネスチャンスになりそうな情報を収集する必要があるでしょう。

車両整備事業者は人口分布の変化にどのように対応するべきか?

人口分布が変化することで、都市部の車両整備事業者には、シェア型作業場の利用カーシェアリング併設のマンションとの連携等、より柔軟な対応が求められるようになるでしょう。一方、郊外の車両整備事業では、広いスペースを利用したカフェや展示場等に併設された整備場も増えると予想され、広い土地を活用したビジネスが行いやすくなると考えられます。

都市部・郊外を問わずにいえるのが、今後は車両整備業界においても異業種との連携が重要になってくるということです。特に、不動産業界とのつながりは大切になってくるでしょう。需要の変化にアンテナを張り情報を集め、ビジネスチャンスを見出す必要があります。

車両整備事業者は、自社が存在するエリアの商圏分析を行い、整備店の半径数十km以内の地理的特徴を調査し、都市型と郊外型の二極化への対応策を検討しましょう。

まとめ

人口分布の変動ライフスタイルの変化により、首都圏・地方都市に限らず土地の価値活用の方法は変化すると考えられます。そのため、車両整備事業者も先んじて、不動産業者等の他業種関係構築の準備をする必要があります。

ビズピット株式会社では、車両整備事業者の方が社会情勢の変化に対応したビジネスチャンスを獲得できるよう、「車両整備事業者の内部リソースも考慮した商圏分析」等、さまざまなサポートを行っています。ぜひビズピットにご相談ください。



【引用】
※1
・みずほ総合研究所『今後都心集中が地方圏でも加速 』
https://www.mizuho-ir.co.jp/publication/mhri/research/pdf/insight/pl190117.pdf(参照 2021-06-30)

※2
大和総研『拡大するシェアオフィス市場と働き方改革~企業にメリット、政府の政策実現の手段にも~ 』
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/japan/20191023_021091.pdf(参照 2021-06-30)

※3
国土交通省
https://www.mlit.go.jp/toshi/content/001327810.pdf(参照 2021-06-30)

※4
名古屋都市センター『自動運転がまちづくりに及ぼす影響に関する研究』
https://www.nup.or.jp/nui/user/media/document/investigation/h30/No137.pdf
(参照 2021-06-30)

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