EVの普及を見据え、自動車整備事業者が備えておくべきことは?

今後ますますの普及が見込まれる次世代車のEVですが、自動車整備事業者としても「どれほど自社のビジネスに影響があるのか?」について把握しておきたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。本稿では、EVだけでなく、並行して普及させる必要があるバッテリーの充電設備についても、現状を交えて自動車整備事業者にとってどのようなビジネスチャンスがあるのか考察します。

なお、次世代自動車としては2つ以上の動力源を備えたHV車(ハイブリッドカー)も存在しますが、本稿では純粋なEVにトピックを絞って紹介します。

【目次】
1 日本における現在のEVの普及状況は?
2 EVの値段は今後下がっていくと予想される
3 今後の普及が見込まれるEVの充電施設
4 EVの普及には自動車整備事業者にとってどのようなビジネスチャンスがあるのか?
 4-1 整備工場も充電に関する付帯サービスを一緒に提供する
 4-2 EVへの買い替えができない既存のガソリン車ユーザーへのサポート業務
5 まとめ

日本における現在のEVの普及状況は?

次世代車の普及は加速的に進んでおり、EVも例外ではありません。政府は、後述のカーボンニュートラルに向けた施策の一環としてEV普及に努めており、2030年半ばまでに新車販売でEV50〜70%の実現を目指しています(※1)。

EVのシェアも年々増えており(※2)、コロナ禍の影響を受けたため年間を通して販売台数は前年を下回ったものの、12月単月では前年比22.5%増まで売り上げが拡大したとのことです(図1)。

図1.近年のEV売上の推移
販売台数ランキング
(資料)「EV等 販売台数統計」(自動車振興センター)より、ビズピット作成

EVの値段は今後下がっていくと予想される

EVの販売価格減少は今後も続くと予測されており、世界6大陸を拠点にエネルギー経済環境に関する調査を行っているBNEF(ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス)の情報(※3)によると、2015年にはアメリカのEV価格の50%を占めていたバッテリーの調達コストが、10年余りで半減するとの調査内容が発表されています。

一部では、EVの価格減少はすでに発生していて、2021年にはテスラが自社商品の大幅値下げを実施しました(※4)。この値下げによって、後輪駆動のスタンダードプラスモデルが82万円の値下げで429万円になり、全輪駆動のロングレンジモデルは156万2000円の値下げが実施され499万円で販売されるようになっています。

以上のように、EVの価格はすでに値下がり傾向にありますので、遠からず「EV=価格が高い」というイメージも払拭されるでしょう。

今後の普及が見込まれるEVの充電施設

EVの普及と同時に、各地に必要となるのがバッテリーの充電施設です。EVの充電方式は大きく2つに分けられ、1時間の充電で10km程度走行可能な「普通充電(AC充電)」と、バッテリー残量が空に近い状態から80%まで充電するのに中容量で15~30分、大容量で30分~1時間程度で充電が可能な「急速充電(DC充電)」があります。

現状、EVが一度の充電で走行できる距離は200〜600kmほどのため、EVの需要が拡大するとともに各地への充電施設の設置は必須と言えるでしょう。なお、EVの充電施設の役割は目的別に以下の3種類に大別されます(図2)。

図2.充電施設の役割
販売台数ランキング
(資料)「EVDAYS」(東京電力エナジーパートナー)の情報をもとに、ビズピット作成。

充電施設検索サイト「EVSmart」を参照すると、2021年現在、EVの充電施設は全国に18,000箇所以上登録(※5)されていて、EVの充電インフラ整備事業に経済産業省の補助金も利用可能(※6)です。

EVがさらに普及すれば、ユーザーがEVで遠出するケースも増えるため、上記の充電施設のうち「目的地充電」に該当する施設のニーズもより高まっていくでしょう。

EVの普及には自動車整備事業者にとってどのようなビジネスチャンスがあるのか?

前述の通り、EV普及の流れは今後ますます加速していくと考えられます。それに伴って発生する自動車整備に関連する新たなビジネスとしては、基本となるEVの整備・点検業務以外に、どのような業務に需要があるのでしょうか。

整備工場も充電に関する付帯サービスを一緒に提供する

前述の通り、EV普及にあたって充電施設のニーズも高まっていますので、事業場に充電設備を設置し、電力供給を行うサービスが検討できます。

事業場で充電を行う場合は、前述した3種類の目的のうち「急速充電」がメインのニーズと考えられます。また、住宅街に近い場所に事業場が存在する場合は、駐車場の貸し出しとセットで充電を行うビジネスも検討できるでしょう。

経路上で充電する場合は「急速充電施設」が求められ、駐車場も込みで貸し出すビジネスモデルの場合は、長時間かけて充電するコンセント型の「普通充電施設」のニーズが高いと予想されます。

整備場へ充電設備を設置する場合は、前述のように経済産業省の補助金も利用できますので、積極的に活用しましょう。

事業場でサービスとして電力を提供する場合、住宅業界のZEHの事例のように屋上に太陽光発電設備を設置して、自前で創出した電力を使うプランも検討可能です(※7)。

カフェや商業施設など、「充電するついでに別のサービスも利用して貰うこと」を目的としたビジネスも可能性がある分野です。デルタと出光興産株式会社などは、災害対応ステーションとしての運用も想定されるEV充電ステーションを開発しています(※8)。

EVへの買い替えができない既存のガソリン車ユーザーへのサポート業務

EVが普及しきるまでの過渡期には、しばらく買い替えのタイミングが来ない顧客を中心に、ガソリン車ユーザーが一定期間残り続けます。

しかし、時代はEVの方に進んできますので、徐々にガソリン車の整備・点検ができる場所やガソリンスタンドが減ったり、利用料金が上がったりしていく可能性が考えられるでしょう。そういったガソリン車ユーザーのために、現行の価格で点検・整備業務を行なったり、給油できるサービスを展開したりといったサポートを行うビジネスが検討できます。

グローバル規模で活動を行うコンサルティングファームのBCGの予測によると、2030年のEVのシェアは55%で、ガソリン車は市場から急に姿を消さないと述べられています(※9)。当面はハイブリッド車も含めたガソリン車がシェアを維持しますので、10年、20年スパンのビジネスには十分なり得るでしょう。

まとめ

今後、EVはますます普及していき、マーケットとしてさらに拡大していきますので、自動車整備事業者にとっても大きなビジネスチャンスとなります。EVの整備・点検業務以外には「充電施設を整備工場に併設して提供する」「長期スパンでのガソリン車ユーザーのサポートをする」などのビジネスなどが考えられるでしょう。

大阪・兵庫のビズピット株式会社は、補助制度の導入支援やEVなどの次世代車も含めた整備情報の共有ができるプラットフォームの開発、充電設備関連で協業が図れる可能性のある他業種との連携などを展開していきます。
来たるEV社会で、自動車整備事業者が新しいビジネスモデルを確立できるようサポートを行っていきますので、ぜひお問い合わせください。



【引用】
※1
・国土交通省、経済産業省
https://www.mlit.go.jp/common/001283224.pdf

※2
・日本自動車会議所
https://www.aba-j.or.jp/

※3
・BNEF
https://cleantechnica.com/2019/04/17/bnef-shocker-electric-cars-price-competitive-in-2020-as-battery-costs-plummet/

※4
・マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20210225-tesla-model3/

※5
・EV Smart
https://evsmart.net/

※6
・製造産業局
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/pr/en/seizou_taka_04.pdf

※7
・経済産業庁
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/general/housing/index03.htmlURL

※8
・PR Times
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000023563.htmlURL

※9
・BCG
https://www.bcg.com/ja-jp/press/10january2020-electric-carURL

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