データ分析で自動車整備業界を救う!データ分析でできること

自動車整備業界は「人材不足」「物価高」などにさらされているため、事業存続を図るためにはデジタル技術を活用した新たな事業モデルの確立が必要です。その1つとして「多変量」を使った顧客データの分析が挙げられます。
多変量解析とは、自動車整備工場の各種データを分析して新たな活路を見出す分析方法です。今回の記事では、多変量解析とはどのような分析手法なのか、またそれによってどのようなことが分かるのか解説していきます。

【目次】
1 自動車整備工場でもデータ分析が重要に
 1-1 整備士は人材不足
 1-2 顧客のニーズを知る必要性
2 データ分析の可能性
 2-1 自動車整備業界でもDX化が進む
 2-2 データ活用の可能性
 2-3 分析にはデータの蓄積が必要
3 自動車整備事業者の顧客を分析する方法
 3-1 多変量解析でできること
4 多変量解析の分析手法
 4-1 重回帰分析
 4-2 主成分分析
 4-3 数量化Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ類
 4-4 自動車整備業界の分析に適した方法とは
5 まとめ

自動車整備工場でもデータ分析が重要に

自動車整備業界の将来を考えると、マーケティング分析をして、顧客ニーズをとらえたサービスを提供することが重要になってきます。自動車業界は大きな転換期を迎えており、自動車整備業界も巻き込まれ、淘汰がはじまっているからです。

本題に入る前に、自動車整備業界の現状と将来について考えてみます。自動車整備士不足や技術の進歩、社会的・経済的背景などによって自動車整備業界はどうなっていくのでしょうか。

整備士は人材不足

現在、自動車整備士の不足が危惧されています。 以下のグラフは、自動車整備士と整備場の数を示しています。
整備場の数が平成19年ごろから急に増え、現在は横ばいになっています。一方、自動車整備士の数は平成23年をピークに減少をはじめ、今でも当時の水準には戻っていません。すなわち、整備場あたりの従業員数は減少していることがわかります(※1)。

図1 自動車整備士数と事業者数の推移
データ分析が求められる背景にある自動車整備人材の推移
(資料)「一般社団法人日本自動車整備振興会連合会 自動車特定整備業実態調査結果概要(平成22年~令和2年)」より、ビズピット作成

顧客のニーズを知る必要性

自動車整備工場が人手不足になる一方、自動車の技術は進歩し続けています。衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術を搭載している車両や電気自動車などが登場し、それらの自動車の整備に新しい知識と整備技術が必要になっています。

今後、自動車整備工場はこれまでと同じことを繰り返すだけでは、うまく経営できなくなることが予想されます。顧客のニーズを分析し、顧客が何を望んでいるのかを理解しなければなりません。人材が不足するなかでほかの整備工場と差別化するためには、アンケートを取るなどし、そのデータをうまく活用することが重要になってきます。

データ分析の可能性

社会の変化に対応していくためには、どのような施策をとればよいのでしょうか。一つの方法として、データ分析の活用が注目されています。

自動車整備業界でもDX化が進む

今、日本ではデジタルトランスフォーメーション(DX)が注目されています。自動車整備業界も例外ではありません。たとえば、自動車を保有するために必要な多くの手続き(検査・登録、保管場所証明、自動車関係諸税の納税など)をワンストップで行えるOSSが普及しています。OSSは平成17年から一部の地域で始まっていましたが、平成29年4月からは利用できる地域が全国に広がり、申請できる手続きの種類が増えています。

このほか、ほかの業界でも一般的に行われている電子帳簿保存法への対応で書類をクラウドに保管する動きや、非接触で見積もりができるシステム、クラウドで法人のリース車両を管理できるようにするなど、次々とDXは進んでいます。
DXは、生産性を上げるための施策ですが、生産性を上げるにはデータを保管しておくだけではなく分析して活用しなくてはなりません。

データ活用の可能性

自動車整備業界でのデータ活用においては、自動車ユーザーのニーズや数、購入するサービスの傾向など、顧客情報の把握が必要です。従来は事業主の経験と勘に頼っていた部分でしたが、インターネットやコンピュータを活用してデータの収集と分析ができるようになってきました。

たとえば、回転すしチェーンの株式会社あきんどスシローでは、入店した客数を管理し、過去の実績から最適な数の寿司をレーンに流すシステムを開発しました。結果としてフードロスの削減につながり、業績を大きく伸ばしました。このように、顧客データを最大限に活用することで、より大きな利益を生み出すことにつながります。

経験や勘では見えていなかった自動車ユーザーのニーズが、データ分析でわかってくる可能性があります。

分析にはデータの蓄積が必要

DXによってデータ活用が広がり、データサイエンスや統計学を活用する機会が増えてきました。ビッグデータと呼ばれる膨大なデータを解析し、社会課題の解決に生かす試みも盛んにおこなわれています。
データ分析を行うには、データの収集が必要です。アプリやクラウドサービスなどを利用したアンケート調査を実施し、統計学を用いた分析を試みれば、紙のアンケートでは気付かなかったことが見えてきます。明確な分析結果が出てくれば、今後取り組むべき課題がつかめるかもしれません。

アンケートをデータ化し、最新の技術と統計学を用いて分析できるようになった現代では、こうした手法を取り入れない手はありません。

自動車整備事業者の顧客を分析する方法

アンケートの結果から、自動車ユーザーが何を求めているかを分析します。しかし、アンケートの分析が回答者の好き嫌いの傾向や割合の集計、あるいは2項目のクロス集計にとどまっていては、その答えは得られません。ニーズを深く知るためには、複数の要因から解析を行う方法を理解しておくことが必要です。その代表的な手法として多変量解析があります。ここでは多変量解析で何ができるのか、その意味や手順を解説します。

多変量解析でできること

多変量解析とは、複数の変数をもとに相互の変数間の関係性を分析する、統計技法の総称です。どのような手法をとればよいのかは「扱うデータ」と「目的」によって変わってきます。多変量解析を用いると次のようなことができます。

・アンケートの結果から商品の強みや弱みを知る。
・各支店の売上高や客数から、新店舗の売上や客数を予測する。

このように、違う種類の2つのデータの相互関係を解析することにより、一つのデータからだけではわからない新たな発見を得ようとするものです。

多変量解析の分析手法

多変量解析にはさまざまな手法があります。アンケートなどの解析をしようとする場合も、どの方法がよいのか目的とデータの内容を見て決める必要があります。ここでは、代表的な分析手法について解説します。

重回帰分析

重回帰分析とは目的変数について、2つ以上の説明変数を用いて予測する方法です。多変量解析の中でも最も基礎的な分析方法とされています。重回帰分析では、基本的には目的変数も説明変数も量的データ(数字で表せられるデータ)を使用します。

たとえば、家賃は、駅までの距離と間取り、築年数などから決められています。この場合、家賃は目的変数、駅までの距離・間取り・築年数は説明変数ということになります。

主成分分析

「主成分分析」は、たくさんの量的な説明変数を、より少ない指標や合成変数(複数の変数が合体したもの)に要約する手法です。合成して要約された変数が「主成分」です。

たとえ話として、身長と体重から、BMI指標を出すことを考えるとわかりやすいでしょう。身長と体重の2つの変数から肥満度を知ることができますが、これをBMIという一つの変数にまとめて表現するのです。このように、主成分分析では多次元の変数を一つに要約してわかりやすくできます。

数量化Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ類

数量化Ⅰ類は重回帰分析とよく似ている分析方法です。数量化Ⅰ類では、目的変数は数量データですが、説明変数が質的データ(数字で表せられないデータ)になります。たとえばある科目で補修授業を受けた人と受けなかった人とでは、その科目の点数にどれくらいの差が出たかなどの分析に適しています。

数量化Ⅱ類は、目的変数も説明変数も質的データであった場合に使われる手法です。たとえば、アンケートからサービスに満足しているかいないか2つに分けようという場合に利用できます。これによってサービスに満足しているグループの特性、不満を感じているグループの特性が見えてきます。

数量化Ⅲ類はマーケティングでよく利用される手法です。たとえば、多数の顧客にaからeまで5種類の商品の好みを聞くアンケートをとると、商品ごとに似通った傾向が見えてきます。「aの好きな顧客はcも選ぶ傾向がある」というようなものです。数量化Ⅲ類では、類似度を分析できます。

自動車整備業界の分析に適した方法とは

自動車整備業界のアンケートで得られる結果は、数値で表すことができない「質的データ」がほとんどです。質的データの分析に適しているのは「数量化Ⅱ類」です。

アンケートを取り、「数量化Ⅱ類」を用いて分析すると、整備工場に訪れた自動車ユーザーが再訪するかどうかを予測できます。たとえばアンケートで、「整備」「接客」「サービス」などの満足度と、「また同じ店で整備したいか」について回答してもらいます。すると、「満足度」を説明変数として、そのユーザーが再訪するかどうかを予測することが可能になるのです。

まとめ

DX化が進む昨今、自動車整備業界も厳しい変化にさらされ、淘汰が始まっています。生き残るためには的確に顧客ニーズをとらえ、必要な施策をとっていく必要があり、そのためにはマーケティングの手法を取り入れなくてはなりません。こうしたデータの分析は一筋縄ではいかないことが多いため、専門家に依頼するのがよいでしょう。

ビズピットでは顧客の購買データを分析し、それをもとに経営支援を行っています。自動車整備業界もDXの時代を迎えています。データ活用で一歩先を行く自動車整備工場にしましょう。自動車整備工場の皆さまからのご相談をお待ちしています。
今回ご紹介した内容の他にも、詳細な情報が掲載されているホワイトペーパーを配布しています。ぜひご覧ください。

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【引用】
※1
・一般社団法人自動車整備振興会連合会
https://www.jaspa.or.jp/member/data/whitepaper.html

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